「モノづくりの楽園」は金型の限界を超えた――サイベックオンリーワン技術×MONOist転職(2)(3/3 ページ)

» 2016年07月29日 09時00分 公開
[杉本恭子MONOist]
前のページへ 1|2|3       

 サイベックが次なる事業軸として期待しているものの一つは医療・介護分野である。2年前から立ち上げた医療事業は、現在売上の7%にまで成長してきた。

 もう一つは独自に開発したサイクロイド減速機である。サイクロイド減速機は、効率、減速比に優れ、コンパクトにできることから期待されてきた技術。しかし複雑なギア構造で精度が要求されるため、切削でしか作ることができず、コストがかかり過ぎてあまり使われなかった。同社ではサイクロイド曲線のギアの設計や解析、ユニット設計から試験まで全て自社でできることを強みに、プレスでサイクロイド減速機を開発。医療・介護、ロボット、自動車など、提案分野を広げていきたいと考えている。

photo サイクロイド減速機の構造

イノベーションが起こる仕掛け

 サイベックには、オンリーワンを生み出すいくつもの仕掛けがある。

 一つは笹川氏が所属する「VT(バリューテクノロジー)研究所」という精鋭部隊だ。2000年4月から設置された組織で、金型の設計、開発、営業など、さまざまな強みを持つメンバーが集結している。顧客のニーズを吸い上げて提案すると同時に、市場のトレンドや時代の先を見てテーマを決め、独自の研究や試作も行う。常に最先端のプレス加工技術を開発し、全てのスタートとなっているのだ。

 「ものづくり未来塾」という人材育成の仕組みもある。先輩社員が講師となり、若手社員を中心に他部署の技術を学ぶ制度だ。他の技術を知ると自分の仕事にもプラスになり、チームワークも強まる。将来的にやってみたい業務を見つける機会にもなり、モチベーションも高まるというわけだ。

photo ミーティングルームではさまざまな部署の社員が集まる。奥がVT研究所

 新しいモノづくりにチャレンジできる「職務発明制度」もある。自分のアイデアを会社に申請し、認められると開発予算がついて、業務として開発に取り組むことができる。今後が期待されているサイクロイド減速機や医療分野の開発も、この制度がスタートだった。イノベーションが起こる仕組みであり、問題解決型の人材育成にも役立っている。

 「大好きな仕事で、自分も仲間も、家族も地域も笑顔になろう」という「Creation for Smile」を理念に掲げるサイベック。常に次の時代を考えて研究を続け、革新的な技術を追求し続ける同社は、モチベーション高く仕事に挑める企業文化と、まねのできない超高精度を生み出すという誇りにあふれたオンリーワン企業だった。

photo

関連キーワード

切削加工 | 転職 | ものづくり


筆者紹介

杉本恭子(すぎもと きょうこ)

東京都大田区出身。

短大で幼児教育を学んだ後、人形劇団付属の養成所に入所。「表現する」「伝える」「構成する」ことを学ぶ。その後、コンピュータソフトウェアのプログラマ、テクニカルサポートを経て、外資系企業のマーケティング部に在籍。退職後、フリーランスとして、中小企業のマーケティング支援や業務プロセス改善支援に従事。現在、マーケティングや支援活動の経験を生かして、インタビュー、ライティング、企画などを中心に活動。


取材協力:マイナビ)

前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.