ホンダのモトクロス参戦車がリチウムイオン電池を始動用バッテリーにした理由エリーパワー 二輪車用リチウムイオン電池 インタビュー(3/4 ページ)

» 2016年06月27日 11時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

クギを刺しても燃えない電池セルを小型化する

 エリーパワーは電池セルのレベルから安全なリチウムイオン電池を開発することを目標に、2006年に創業したベンチャー企業だ。定置用蓄電池が主力製品で、二輪だけでなく四輪を含めても車載用電池は実績がない。しかし、銃で撃ち抜いても発火せず、そのまま電力を供給し続けることができるほど、安全性に特徴があるリチウムイオン電池セルの技術を有している。

 安全性を第一に追求してきたのは、非常用電源としても期待される定置用リチウムイオン電池が災害などで壊れて二次災害の原因になってはならない、という創業者の思いからだ。そのため「リチウムイオン電池セルがなぜ危険なのか、どうすれば安全性を高められるかに注目して研究開発を続けてきた」(河上氏)。

屋外室内 主力とする定置用蓄電池。屋外に設置するタイプだけでなく室内に置くタイプも取りそろえている (クリックして拡大)

 安全性のカギを握るのは正極材料だ。「定置用ではリン酸鉄リチウムを採用してきた。しかし、この材料を使えば燃えないセルになる訳ではない。また過充電に対応した熱対策など、設計も安全を重視している」(同氏)。ホンダの競技用車両に搭載する始動用リチウムイオン電池も定置用と同じ材料を使用している。

 安全性に強みがあるとはいえ、定置用と二輪の始動用では性質が大きく異なる。「定置用は8〜10時間かけてゆっくり充放電を繰り返すが、二輪は1秒の間に大きな出力が求められる。単に小型化するだけでなく、出力の出し方を変えなければならなかった」(同氏)という。

二輪定置用のセル 二輪の始動用バッテリー(左)と定置用蓄電池のセル(右)。小型化しながら瞬間的な出力に対応するのが課題となった

 「リチウムイオン電池はイオンがセパレーターを行き来することで反応している。セパレーターの面積を増やせば出力が増えるが、電極材料も含めて全てを始動用バッテリーのハコに収めるにはバランスをとらなければならない。この配分がうまくいき、二輪の始動用バッテリーとして成立する性能が出せた」(同氏)。

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