身近な存在であるイーサネットですが、データセンターでのイーサネットはその厳しい環境下で常に変化し続けることを求められています。単純に“パイプを太くする”ことでは生き延びることは難しいでしょう。
地表奥深くの計り知れない圧力と温度にさらされる鉱物は、人間に身近な環境では再現不可能な形を成します。炭素はダイヤモンドになることもあれば、グラファイトになることもあります。
同様にデータセンターの極めてダイナミックな環境では、イーサネットがパロアルト研究所の発明者にとって想像もできない構成を持つようになりつつあります。そしてそれは炭素と同様、必ずしも類似性のないさまざまな形を成しています。
しかし、鉱物がある形を成し、その形を保つのとは異なり、データセンターという厳しい試練の場の中で、各イーサネットアダプターはアプリケーション環境の変化に対応できるように絶えず変化することを迫られます。もはやパイプを太くしさえすれば、それで十分という時代ではありません(図 1)。
温度はさておき、まずは圧力の問題からです。
データセンターはさまざまな外力により、「サーバで満たされた大部屋」という単純な形をはるかに超えて変形し続けています。こうした力には、アプリケーションによるものもあれば、ビジネスモデルによるものもあり、物理学もその1つです。
アプリケーションの中で広く知られているのはビッグデータ解析です。統計、分類、さらにはニューラルネットワーク解析を通じて大量のデータセットを渡すという考え方は、調査データを解析して解決策を得るツールから生まれました。
ビッグデータツールは金融、証券、故障予測などの分野において、バックグラウンド処理からリアルタイム処理への移行が進んでいます。こうした流れは、データセンターネットワークに対して膨大な帯域幅要求を突きつけており、中には400Gbps以上が要求されることもあります。
C-RAN(Centralized Radio Access Network:集中型無線アクセスネットワーク)やネットワーク仮想化、フラッシュトレーディング、さらにはIoTの一部概念など、さまざまな形の仮想化は、異なる方向に引き寄せられています。これらのアプリケーションでは、ゼロネットワークレイテンシやSLA(Service Level Agreement)ネットワーク間の正確なタイミングのような、特殊な機能が要求されます。
しかし、データセンター事業者はビジネス上の急務を踏まえ、別の方向に向かっています。事業者は、空いているサーバやストレージチャネルを最大活用できるように再配置しながら、あらゆる種類のアプリケーションを自由に組み合わせるクラウドセンターを提供したいと考えています。クラウド事業者は、完全に均一なハードウェア、ソフトウェアコンフィギュレーション可能なインフラ、そして(認めるかどうかはともかく)ハードウェアベースの強力なセキュリティを必要としています。
その上で物理学的な問題も無視できません。スループットを高めることは、データセンターをスケールアウトする、つまり2〜3000台のサーバラックを追加することです。しかし、スケールアウトはラックの消費電力増加、発熱増加、電力網からの十分な電力の確保といった電力問題に直結します。
加えて経済面の問題もあります。データセンターのライフサイクルが短ければ、電力コストが設備投資を上回ることになります。そのため、イーサネットインタフェースを含め、あらゆる場所における消費電力を最小化することに熱が入っています。
帯域幅、レイテンシ、機能、セキュリティ、均一性、コンフィギュラビリティ、効率などは、いずれも合理的な要件です。問題はこれから見ていくように、それらがハードウェアレベルではほとんど相互排反であることです。
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