東工大のTSUBAMEは、2015年度は計算資源の20%(1年当たり114万ノード時間)以上を産業利用に提供した。
TSUBAME 1.0が登場したのは2007年で、2010年10月にはTSUBAME 2.0にバージョンアップした。同年11月のスパコンランキング「Top500」で世界4位、国内1位となった。またこの時、国内のスパコンとして初めてLINPACK性能の1PFLOPS超えを達成している。現行バージョンである2.5となったのは2013年だ。これはTSUBAME 2.0のアクセラレータ全てをバージョンアップしたものになる。理論性能が5.7PFLOPS、実行性能は2.4PFLOPSで、TSUBAME 2.0の2倍の性能になった。さらに2016年度末にはTSUBAME 3.0がリリース予定で、理論性能は20PFLOPS以上になるとのことだ。
TSUBAMEは企業がクラウドとして利用するのに適した条件を持っているという。1つは、CPUがIntelアーキテクチャであることだ。通常、商用ソフトウェアはIntelアーキテクチャのコードで書かれているため、TSUBAMEでは多くのCAEソフトウェアをそのまま使うことが可能だ。例えば京は異なるアーキテクチャのため、ソフトウェアの移植(ポーティング)の作業が必要になる。
もう1つの特徴は、アクセラレータにNVIDIAのGPUを採用していることだ。アクセラレータとしては主流のため、これについても多くのソフトウェアが対応している。TSUBAME2.5にはGPU(NVIDIA Tesla K20X)が1ノード(2.93GHz、12コア、メモリ54GB)に対して3基搭載されている。
実はTSUBAMEをはじめ使っていたのは、自らの解析コードを持つか、OpenFOAMのようなコミュニティーコードを自力でポーティングできるような技術を持つ人たちだった。だがそういったユーザーは最高性能のコンピュータを求めるため、ナショナルフラッグシップの京のようなスパコンが登場すると太刀打ちできない。そこで、より多くの企業に使ってもらえるスパコンはどんなものなのかをあらためてしっかり考えたそうだ。その結果、普段は社内のPCで科学技術計算を行っているが、新たにスパコンに取り組むことで業務改革したいと考えている企業をターゲットにしたという。
そういった企業に使ってもらうためには、「企業が普段使用しているアプリケーションが使えること」が必須だった。一方、これらの検討を始めた3、4年前は、商用アプリケーションはコア数に応じて課金するライセンスが一般的だったり、スパコンでは既に所有するライセンスは使用できず新たにライセンスを購入する必要があるなど、スパコンでの使用は一般的ではなかったという。「当時はスパコンで商用アプリケーションを動かすことがビジネスになるとは誰も考えていませんでした」と佐々木氏は振り返る。
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