フォルクスワーゲンは排気ガス不正のイメージを覆せるか、直噴ターボを刷新エコカー技術

フォルクスワーゲンは、同社の直噴ガソリンターボエンジン「TSI」を改良したと発表した。2016年後半からの市場投入を予定している。2015年秋に発覚した同社の排気ガス不正問題では、ディーゼルエンジン「TDI」のNOx排出量だけでなく、TSIのCO2排出量の不正も指摘されていた。新技術の導入により、TSIのイメージ刷新を目指す。

» 2016年05月06日 06時00分 公開
[朴尚洙MONOist]
フォルクスワーゲンの新開発エンジン「EA211 TSI evo」 フォルクスワーゲンの新開発エンジン「EA211 TSI evo」 出典:フォルクスワーゲン

 Volkswagen(フォルクスワーゲン)は2016年4月28日(欧州時間)、「第37回ウイーン国際エンジンシンポジウム」において、同社の直噴ガソリンターボエンジン「TSI」を改良したと発表した。2016年後半からの市場投入を予定している。2015年秋に発覚した同社の排気ガス不正問題では、ディーゼルエンジン「TDI」のNOx排出量だけでなく、TSIのCO2排出量の不正も指摘されていた。新技術の導入により、TSIのイメージ刷新を目指す。

 今回発表したエンジンの型番は「EA211 TSI evo」。2016年後半から市場投入するのは、排気量1.5l(リットル)で最高出力が96kWと110kWの仕様になる。CO2排出量で不正のあったTSIの型番は「EA211」で、排気量は1.4lだった。

 EA211 TSI evoに導入した技術は大まかに分けて6つある。1つ目は、ターボエンジンでありながら圧縮比をEA211の10.5から12.5に高めるとともに、燃焼方式をミラーサイクル(アトキンソンサイクルとも)にしたことだ。2つ目は、ガソリンエンジンとして初となる電動式可変ジオメトリターボチャージャーの採用。3つ目は、最大350barの噴射圧を実現した燃料噴射システムである。4つ目は革新的な熱管理、5つ目はEA211にも採用していたエンジン気筒休止システム(ACT)、6つ目は最高出力110kW仕様に採用した気筒内コーティング技術「アトモスフェリックプラズマスプレー(APS)」となる。

 これらの中でも大きな変更になるのがミラーサイクル燃焼と電動式可変ジオメトリターボチャージャーの組み合わせになるだろう。ミラーサイクル燃焼によって熱効率の向上を図りながら、ミラーサイクル燃焼が苦手とするトルク特性を、電動式可変ジオメトリターボチャージャーで幅広い負荷領域、特に1300rpmという低回転数域から得られやすくした。

 排気量1.5lのEA211 TSI evoは、従来の排気量1.4lのEA211と比べて燃費が最大10%向上し、100km走行当たりの燃料消費量も1l削減したという。特に実用燃費の向上に力を入れたとする。またアクセルを踏み込んでから最大トルクが出るまでの時間は約35%短縮している。

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