前回は“イノベーションを起こす組織と力”についてお話ししました。今回は、派遣エンジニアが実際に就業先で行った事業改革を例に、“現場イノベーション”についてのヒントをお伝えします。
前回はソニー「ウォークマン」にまつわる“イノベーションを起こす組織と力”についてお話ししました。けれど、「そんなイノベーション、どこでも起こるものじゃない」と思う人もいるでしょう。そこで今回は、とある派遣エンジニアが実際に就業先で行った事業改革を例に、“現場イノベーション”についてのヒントをお伝えできればと思います。登場人物はKという組み込み系エンジニア。エンジニア派遣会社で正社員として働いていて、新たなプロジェクトに参画するところから物語は始まります。
派遣会社で正社員として働くエンジニアKは、ひとつのプロジェクトを終え、また新たなプロジェクトへのアサインが確定しました。派遣される企業はとあるOA機器を開発・販売しており、業界での知名度もトップクラスです。
しかしその本社に到着したKは驚きます。想像していたよりもオフィスはずっとコンパクト。あらためて会社概要を確認すると、売り上げ規模も500億円程。知名度の割にはこぢんまりとしている。本来であれば、もっと市場にも強い存在感をもたらしているはずじゃないのか?
着任早々、違和感を覚えたKは、早速この問題を掘り下げようとアクションを起こします。
Kの配属は技術部門でOA機器のハードウェア開発を担当するグループ。日々の業務を通じてグループメンバーと積極的に報連相や情報交換などを繰り返し、昼食時などは業務外の話もしながら関係性を深めました。するとさまざまな視点での意見が聞け、状況が見えるようになってきます。
営業部門と連携が必要な場面では自ら手を挙げ、他部門とも情報や意見交換を主体的に行ってきました。すると少しずつ、技術部と営業部が抱えている“悩み”のようなものが分かってきました。
技術部の悩み:開発工数が増大しており、さらには納期遅れの発生でコストも上がっている
営業部の悩み:保守サービスに多くの時間を要し、本来の目的である売上拡大ができていない
OA機器業界知名度トップクラスの会社です。技術部門はもちろん自社の技術力に大きな自信と誇りを持ち、非常に高度な開発を行っています。だから、開発に時間がかかるのも当然、という空気があります。
一方の営業部門はとてもお客さま思い。1つの動作トラブルにもすぐに駆けつける対応を心掛け、そのフットワークを強みに感じています。けれど、度々起こるトラブルはどうにかならないものかと思っています。
こんな状況がずっと続き、その企業の“文化”として根付いていました。営業部はどんなトラブル対応に時間をとられているのか? どのくらいの頻度で発生するのか? そしてそれらが事業にどのような影響を与えているのか? このあたりに問題解決の糸口があると仮説を立てたKは、同じグループに派遣されたメンバーとともに、それを検証するためのデータ収集に乗り出します。
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