サービスが実際に運用され始めると、求められてくるのはサービスの“質”だ。
基本的に屋外で使用するドローンはGPSで位置制御を行う。しかし、工場内やトンネルなどGPS電波がうまくつかまらない(弱い)環境では独自の位置制御システムが必要になる。これはドローンを製造する各社が技術的に競っている部分の1つだ。
前述のミニサーベイヤーなど、工場など屋内向けた非GPSタイプの機体ではSLAM(Simultaneous Localization And Mapping)技術による制御を行う。SLAMはロボットの制御にも用いられる技術で、環境マッピングと位置推定を同時に行うことで自律的に飛行する。ミニサーベイヤーでは水平・垂直方向のレーザーで3次元でのリアルタイムマッピングを行い、マップ内での自分の位置を推定し、自律飛行するという。
佐賀大学の佐藤和也教授らが進めている研究は、Webcamを使ってドローンの自律飛行を制御しようというもの。機体に2つのマーカーを取り付け、Webcamの映像でその位置を認識して操作する。専用センサー類を使わないため、ハード的なコストを抑えての非GPS制御が可能となる。また、WebCamの映像をiPadなどタブレットなどへ映し出し、操作系もそちらで扱えるようにすれば、よりドローン活用のハードルを下げることができる。
リコーは、ステレオカメラとIMUセンサー(加速度センサー、ジャイロセンサーを含む慣性計測装置)によるドローンの自動飛行の研究をブルーイノベーション、東京大学との共同開発で進めている。ブースでは、リコーがこれまで培ってきた画像センシング技術を生かした飛行システムやソリューションを展示されていた。
面白いところでは、3D開発ソフトを数多く手掛けるオートデスクが3Dアニメーション作成ソフト「Maya」を利用したドローン制御のデモを行っていた。ブースでは、Kinectを使って現実の3D空間をリアルタイムにMayaへ取り込む様子が紹介されていた。3D空間中でドローンを認識させ、飛行ルートを設定することで自動飛行させることができるし、その中でドローンの飛行を操作することも可能だという。確かに3Dの画面を見ながらの操作は直観的で、比較的容易に操作できるようになりそうだ。
富士通が新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)と共同研究を進めているのが、建造物の点検に特化した二輪型マルチコプタ。ドローンというと対象物と接触しないことが大前提だが、対象物を建造物に限定することで、あえて接触型としたという。位置を固定することができ、接触している面に沿って、連続的に情報を記録することが可能となっている。製品化に向け、実証実験を重ねているという。
サービスの質を上げるため、ジェネラルな、オールマイティーな方向でドローンの機能を上げていくより、用途や使用場所を限定して最適解を追求し、そこに自社の技術を生かすという流れが起きているのが非常に興味深いところだ。
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