IoTは「モノがつながって新たな価値を生む」ことを期待されており、製造業を含む全ての業界がその実現を期待する。しかし、その発展には従来のアーキテクチャでは対応できないという意見もある。
IoTを語る際に避けて通れない要素の1つが「柔軟性」であることに異論はないはずだ。IoT(Internet of Things)は「モノのインターネット」と訳されるが、実質的には「さまざまなモノがインターネット(ネットワーク)でつながり、新たな価値を生む」という意味で用いられることが多い。
ネットワークによってつながることで新たな価値を生むという意味に着目した際、ITに直接関しない立場であっても、ITそしてITを駆動するオープンソースソフトウェア(OSS)の動向は無視できないものとなっている。自動車メーカーが車載Linux「Automotive Grade Linux」を軸とするオープンソース活動に注力しており、また、CAD/CAE、RTOSといった領域においても、OSSを活用しようという動きは活発だ。
設立当初からOSSそのものを事業とするITベンダーのレッドハットも、IoTに向けた注目すべき動きを見せている。同社は2015年4月よりIoTに関連するインフラやデバイスを開発する企業向けに「Red Hat Embedded Program」を開始しており、これまでエンタープライズ向けとしていたRed Hat Enterprise LinuxやRed Hat JBoss Middlewareなどを組み込み機器向けに提供している。
OSSを武器とする“ITの巨人”レッドハットは、あらゆる企業がIoTを導入そして活用すべく腐心している状況に対して、どのような考えを持つのか。米Red Hatのマーク・コギン氏(プラットフォーム製品部門 製品マーケティング シニアディレクター)は、「IoTとOSSは密接に関連している」とその姿勢を語り出した。
――「さまざまなモノが接続されることで新たな価値を生む」というIoTについて、OSSを事業の軸とするITベンダーのレッドハットはどのような認識を持っているのでしょう。
コギン氏: ITにおいてOSSはイノベーションの源泉となっています。それはLinuxやApacheなどが証明していますし、OpenStackやHadoopなどもOSSを源とするイノベーションの実例といえるでしょう。IT以外の領域についても、車載用LinuxのAutomotive Grade Linuxや組み込み向けの開発環境であるKuraなどがあり、さまざまな領域でOSSを源泉とする技術が用いられています。
ビジネス的な観点からしても、サービス対応や営業システムの合理化はもちろん、生産現場におけるセンサーデータ解析や在庫管理など、さまざまな部分で利用されています。インテリジェンスやロケーションサービスをきっかけに、IoTの存在感は増しているといえるでしょう。
このような背景の元、レッドハットとしては「データの重要性」に着目しています。データがビジネスモデルを生み出し、駆動することになると考えているからです。そのなかではデータを解析処理するデータセンターの重要性は高まりますし、データセンターとゲートウェイ、デバイスというIoTを構成する3層の連携の重要性も大切です。デバイスマネジメントやセキュリティポリシー管理はもちろんですが、企業向けエンタープライズITと同等の信頼性や拡張性などが3つの層に必要となるでしょう。
注目すべき点の1つに、ゲートウェイが「中間層のジョブに特化した存在」として位置付けられて始めていることが挙げられます。ネットワークによって接続されたデバイス(エンドデバイス)の数は爆発的に増えると予想されますが、そうなってもゲートウェイが処理を吸収するので無理なくスケールできるのが、従来モデルとの大きな違いと言えます。
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