トヨタ自動車は、「ル・マン24時間レース」を含むFIA世界耐久選手権(WEC)の2016年シーズンに挑戦する新型車両「TS050 HYBRID」を発表。レギュレーションの改正や、2015年シーズンを通して、Porsche(ポルシェ)、Audi(アウディ)の後塵を拝したことを受け、パワートレイン構成を大幅に変更した。
トヨタ自動車は2016年3月24日(欧州時間)、「ル・マン24時間レース」を含むFIA世界耐久選手権(WEC)の2016年シーズンに挑戦する新型車両「TS050 HYBRID」を発表した。レギュレーションの改正や、2015年シーズンを通して、Porsche(ポルシェ)、Audi(アウディ)の後塵を拝したことを受け、これまで採用を続けてきたパワートレイン構成を大幅に変更。「WECのLMP1ハイブリッドクラスにおいて、ライバルのポルシェ、アウディに戦いを挑み、再びチャンピオンを奪還すべく今シーズンに臨む」(同社)という。
TS050 HYBRIDは、排気量2.4l(リットル)のV型6気筒直噴ツインターボガソリンエンジンを採用した。これは、2014年にシーズン優勝を果たし、2015年シーズンも使用した「TS040 HYBRID」の排気量3.7lのV型8気筒自然吸気ガソリンエンジンから置き換えとなる。2012〜2013年シーズンの「TS030 HYBRID」で、排気量3.4lながらV型8気筒自然吸気ガソリンエンジンを採用していたことからも、大幅な方針変更と言っていいだろう。「TS040 HYBRIDの技術は、既に現行市販車に反映されてきた。ターボエンジン技術がさらに市販車で重要度を増していく中、WECを戦う中で得られる技術やノウハウはもっといいクルマづくりに生かせる」(同社)としている。
この直噴ツインターボエンジンは、燃料流量と燃料の総エネルギー量が従来比で約7.5%削減される新レギュレーションへの最適化も図られた。
エンジンのダウンサイジングに合わせてハイブリッドシステムも大幅な変更を加えた。TS040 HYBRIDでは1周回当たりのエネルギー回生量は6MJだったが、TS050 HYBRIDでは8MJを選択した。前輪と後輪のモーター/ジェネレーター(M/G)によって減速時のエネルギーを回生する方式に変更ないものの、エネルギーを蓄積するデバイスはキャパシタに替えてハイパワーリチウムイオン電池となった。また、アイシン・エイ・ダブリュ製の前輪M/Gユニットの小型化が車体底部の空気流を大きく変えており、全体のパフォーマンス向上に貢献している。
エンジン出力は367kW、ハイブリッドシステム出力は前輪と後輪合わせて367kW、パワーユニットの合計出力は735kW(1000ps)となる。TS040 HYBRIDの出力は、エンジンで382kW以上、ハイブリッドシステムで353kW以上となっていた。
2台の参戦車両のうち、5号車のドライバーは2014年シーズンに優勝したアンソニー・デビッドソン選手とセバスチャン・ブエミ選手、ル・マン24時間レースでポールポジションを獲得したことのある中嶋一貴選手の3人が務める。6号車は、ステファン・サラザン選手、マイク・コンウェイ選手、そしてF1レースで表彰台経験を持つ小林可夢偉選手がドライバーとなった。
2016年3月25〜26日にフランスのポールリカールサーキットで行われるテストを経て、同年4月17日のシルバーストン6時間レースから全9戦の2016年WECシーズンが始まる。
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