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» 2016年03月07日 10時00分 公開

流体解析の安定性とクーラン条件無償ソフトで流体解析(5)(2/2 ページ)

[伊藤孝宏,MONOist]
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自動車周りの流れ解析

 今回は、解析事例として自動車周りの流れを紹介します。形状は図1に示すような、車長3m、車高1.2mのワンボックスカーを小さくしたようなモデルです。

図1:車体寸法と解析空間の寸法

 解析空間は長さ5m、高さ2.5mです。前回の翼周りの流れの解析と同様に、正しい解析を行うには、十分に大きな解析空間を持たせる必要があり、5m×2.5mの解析空間は車体の大きさに比べて不十分です(車体前方には車長の10倍以上、車体後方には車長の20倍以上、主流と直角方向には車長の10倍以上が目安となります)。

 ただし、これらの条件を満足するようにモデルを作成するとFlowsquareでは、膨大な計算時間が必要となるため、便宜上、車体付近の空間だけをモデルとしています。実務で用いるような解析を行う際は、十分な解析空間を設けるようにしてください。

 図2は図1を基に作成したbc.bmpです。

図2:境界条件を示す画像 bc.bmp

 左端の青い線が流入条件で、流速は秒速10m(時速36km)となります。下端の緑の線は移動境界で、秒速10mで右に移動する条件が与えられています(解析は自動車を静止させて、周囲の空気を移動させるため、地面も移動させる必要があります)。

 自動車周りの流れのモデルと解析結果をこのリンクからダウンロードしてください。

 ダウンロードしたcommuter.zipを右クリック→「すべて展開」とすると、モデルデータが収納されたbkupフォルダ、計算結果が収納されたdumpフォルダ、画像データが収納されたfigsフォルダができあがります。

 円柱周りの流れを計算するには、bkupフォルダ内のbc.bmpとgrid.txtファイルで、flowsquare.exeの隣の同名のファイルを上書きして、Flowsquareを起動し、連載1回目で説明した方法に従ってシミュレーションを行ってください。

 解析モードで計算結果だけを見る場合は、Flowsquareを起動して、プロジェクト名入力画面で、「commuter −a」と入力し、計算結果を読み取ります。

 図3は車体周りの流速分布を、図4は同様に静圧分布を示します。

図3:車体周りの流速分布
図4:車体周りの静圧分布

 図4を見ると、車体正面の部分で静圧が高くなっています。一方、車体後方には静圧の低い部分が見られます。つまり、車体前方では正の圧力で車体を後方に押し、車体後方では負の圧力で車体を後方に引いていることが分かります。これが車体に働く空気抵抗で、空気抵抗を減らすには、車体前方のみならず後方の形状も考慮する必要があります。また、車体上方でも静圧が低下していることが分かります。これにより、車体には上に引っ張られる力が働き、タイヤのグリップ力が低下します。エアロパーツと呼ばれる部品は、タイヤのグリップ力が低下しないように、翼型を上下逆にしたような形状にして、下向きの力を発生させます。ただ、市販の自動車はこれらの車体に働く力を考慮して設計されているため、通常の走行では、エアロパーツなどの必要性はありません。

 図5、図6に市販の流体シミュレーションソフトによる3次元での解析結果を参考までに示します。

図5:市販ソフトによる3次元解析例 1
図6:市販ソフトによる3次元解析例 2

 今回の3Dプリンタ出力用のモデルデータは3D モデラボからダウンロードできます。


 5回に渡って、Flowsquareの使い方と解析例を説明してきました。連載が流体解析に興味を持っている方の参考になれば幸いです。また、Flowsquareは連載で紹介した事例以外にも、化学反応を伴う流れや、熱量の計算などができます。興味のある方は、Flowsquareのサイトの使い方コーナーを参考に試してみてください。

筆者紹介

伊藤孝宏(いとう・たかひろ)

1960年生。小型モーターメーカーのエンジニア。博士(工学)。専門は流体工学、音・振動工学。現在は、LabVIEWを使って、音不良の計測・診断ソフト、特性自動検査装置などの開発を行っている。



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