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» 2016年03月03日 14時00分 公開

3Dプリンタの“脱・試作”は日本式モノづくりでこそ生きる――GE 刈羽工場メイドインジャパンの現場力(5)(3/4 ページ)

[三島一孝MONOist]

課題は製造技術ではなく「発想の壁」

 しかし、成果を出すまでの道のりは決して平たんではなかったという。既に3Dプリンタそのものの使い方などには知見がたまっていたが「現実的に製造に至るまでには数多くの試行錯誤があった」と3Dプリンタ導入プロジェクトを担当する刈羽事業所 刈羽エンジニアリング部 設計開発グループの三橋栄治氏は述べる。

photo 3Dプリンタ導入プロジェクトを担当する刈羽事業所 刈羽エンジニアリング部 設計開発グループの三橋栄治氏と導入した松浦機械製作所の「LUMEX Avance-25」

 金属3Dプリンタで最終製品を製造することを考えた場合、従来と同じものを作っていては不採算であることは確実である。作業スピードを考えた場合、切削加工やプレス加工などの方が、圧倒的に速いからだ。3Dプリンタは金属の膜を積み重ねていくため、とにかく1つの製品を造形するのに時間がかかるということが弱点だといえる。そのため「従来やりたいができなかったもの」を製造するということが重要になる。

 そこで重要になるのが、設計の発想である。設計者は最終的な製品の製造や加工などを考えて設計するのが常識である。現在の加工技術における精度や制限などを元に形状を設計する癖が付いているともいえる。そのため、3Dプリンタによりその制約がなくなると、考えのもとになる指標を失うことになるため、設計に頭を抱えることになるのだ。

 「金属3Dプリンタの性能や加工精度などの問題は十分に検討期間があったので想定外のことは特になかった。しかし、長年、金属加工の制約を元に設計してきた設計者の発想が新たな制約になるというのは、予想以上に難しかった。さまざまな場面で試行錯誤を重ね、これらの発想の壁を乗り越えていく必要があった。また過剰に自由度を追求しすぎても信頼性を維持できなくなる。ちょうどいいバランスを作り出すにはさまざまな挑戦があった」と三橋氏は述べている。

 実際に最初の製造モデルについては、「自由な発想」と「従来の設計ではできなかったもの」に意識を振り過ぎた結果、信頼性の面で欠陥があり、再度設計をやり直すということも発生したという。「考え過ぎた結果、チェックに『抜け』があることに気付かなかった。3Dプリンタで製造するということについては、従来の知見を生かしつつ、新たなノウハウが必要になる」と三橋氏は強調する。

 一方で3Dプリンタによる製造で懸念される強度や耐久性については「不安はあったが結果的には思った以上の結果が出ている」(三橋氏)としている。

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