3Dプリンタの“脱・試作”は日本式モノづくりでこそ生きる――GE 刈羽工場メイドインジャパンの現場力(5)(2/4 ページ)

» 2016年03月03日 14時00分 公開
[三島一孝MONOist]

発電所やプラント向けのバルブを製造する刈羽事業所

 刈羽事業所は、新潟鐵工所と米国ウオシントンの技術提携により生まれた新潟ウオシントンの刈羽工場として1970年に稼働。その後、自動制御機器部門の独立と合わせニイガタ・メーソンネーランとして企業化し、2000年にはドレッサーの100%傘下となった。2011年にはドレッサーがGEに買収されたことになり、現在はGEグループとして活動を続けている。

 製造しているのは、石油、ガスなどのエネルギー装置産業向け計器、流体制御バルブ、発動機、ガソリン自動販売機などの製品である。発電所やプラントなど、高度な信頼性や精度が要求される製品であり、金属加工などの技術力が問われる領域で力を発揮してきた。

photophoto 発電所やプラント用の高精度なバルブや計器を製造する刈羽事業所の工場内の様子(クリックで拡大)

2013年後半から3Dプリンタでの生産を検討

 刈羽事業所で3Dプリンタを活用して製造を行っているのは、こうした高精度バルブの1つである「自動調節弁」だ。自動調節弁の製造は、通常は鋳込み、旋削・切削・研削加工、溶接、仕上げ、組み立ての工程を必要とする。大きな素材から削ることで部品を製作し、溶接、組み立てで製品を完成させるという流れである。そのため、各工程の加工精度や加工方法などによる制約を受け、設計や製造の自由度は限られたものとなっていた。

 3Dプリンタは「積層造形技術」の1つとされているように、金属の薄い膜を積層させて形を作り上げるというものであるため、複数の部品の一体成形が可能となる。内部が空間となっている製品や複雑な形状の製品などは、製造上の問題から複数の部品に分けて製造する必要性があったが、これらについても一体での成型が可能となる。そのため、無駄な機械加工を削減でき、工数的にも材料的にもコストを削減できる。

 刈羽事業所では2013年後半から樹脂用の3Dプリンタを入手。2014年前半には技術者による検討と、金属3Dプリンタによる試作を開始し「十分に最終製品でも利用できる」という勝算を得てから2014年後半に金属3Dプリンタの導入に踏み切った。

 導入したのは、松浦機械製作所の金属光造形複合加工機である「LUMEX Avance-25」である。LUMEX Avance-25は、金属積層造形の方法としてパウダーベッド方式を採用。これは粉末を敷いた領域を熱によって選択的に溶融結合させる技術であり、粉末の板を徐々に下に下げていくことで成型を進めていく方式である。マシニングセンターの機能なども搭載しており、一部簡単な切削作業なども行えることが特徴だ。

 これにより、従来の製造方法では約3カ月必要だった特殊形状の部品製造が約2週間で可能となるなど、大幅な短納期化を実現できたとしている。

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