裏面照射を置き換える? パナソニックが有機薄膜とAPDのCMOSセンサーを発表車載半導体(3/4 ページ)

» 2016年02月04日 06時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

グローバルシャッタ機能による飽和信号量は10倍に

 もう1つは「従来比約10倍の明るさまで忠実に画像を撮像できる高機能グローバルシャッタ技術」だ。グローバルシャッタとは、全画素同時タイミングで行うシャッタ動作のことで、画素1行ごとにシャッタ動作を行うローリングシャッタ動作がCMOSセンサーでは一般的である。

 CMOSセンサーのグローバルシャッタ機能は、各画素内にメモリを設けて、光電変換した信号を格納することで機能を実現していた。このため、画素内に追加したメモリ部が光電変換部面積を圧迫し、グローバルシャッタ機能を搭載すると飽和信号量が減少してしまうという課題があった。

 今回の有機薄膜CMOSセンサーでは、「光電変換制御シャッタ技術」でグローバルシャッタ機能の実現を図った。光電変換制御シャッタ技術は、有機薄膜に印加する電圧を調整して光電変換効率を制御するだけでシャッタ機能を実現できる。画素内に新たな素子追加をする必要がないので飽和信号量が減少することがない。

CMOSセンサー(左)と有機薄膜CMOSセンサー(右)のグローバルシャッタ機能の構造 CMOSセンサー(左)と有機薄膜CMOSセンサー(右)のグローバルシャッタ機能の構造。CMOSセンサーはメモリ部が別途必要だが、有機薄膜CMOSセンサーは不要(クリックで拡大) 出典:パナソニック

 さらに画素ゲイン切り替え回路による「高飽和画素技術」によって、従来のグローバルシャッタ機能を持つCMOSセンサーと比べて約10倍の飽和信号量も可能になった。もちろんローリングシャッタ動作もセンサー駆動の設定だけで切り替えられる

 この技術により、明暗差の大きいシーンで、画質劣化やシャッタ歪みのない画像を取得できるようになる。

 光電変換制御シャッタ技術と同様に、有機薄膜に印加する電圧や印加時間を変化させることで、感度を可変させながら多重露光撮像に応用できる「感度可変多重露光技術」も開発した。1回の撮像で動体速度に合わせた最適露光が得られることによる動体/文字認識や、時間に応じた感度濃淡を付けた撮像を行うことにより、動き検出時の進行方向情報の取得が可能になる。動体検知や動き方向のセンシングなどに展開したい考えだ。

有機薄膜CMOSセンサーのシャッタモードの違いによる撮像結果比較(上)と「感度可変多重露光技術」の例(下) 有機薄膜CMOSセンサーのシャッタモードの違いによる撮像結果比較(上)と「感度可変多重露光技術」の例(下)(クリックで拡大) 出典:パナソニック

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