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» 2015年12月22日 10時00分 公開

「バブル」に沸いた自動運転は「サスティナブル」になれるのか自動運転技術(2/3 ページ)

[桃田健史,MONOist]

「自動運転」と「無人運転」の違い

 そこで気になることがある。「自動運転」と「無人運転」の違いだ。多くのメディアがこれら2つをゴチャ混ぜに報道している。

 自動と無人、両者の大きな違いは「オーバーライドするか、しないか」である。オーバーライドとは、手動運転から自動運転、または自動運転から手動運転への切り替えを指す。

国内自動車メーカー各社が開発を加速させている自動運転車は「オーバーライドする」自動運転車である 国内自動車メーカー各社が開発を加速させている自動運転車は「オーバーライドする」自動運転車である。写真は日産自動車の自動運転試験車のデモンストレーションの様子

 ADASの延長線上で自動運転を考えている自動車メーカーの場合「オーバーライドはしたくない」というのが本音だ。そう考える大きな理由の1つが、自動運転中に寝てしまったドライバーを、手動運転に「オーバーライド」させる時の「技術的なリスク」と「法的リスク」だ。

 技術的なリスクとは、ウェアラブル端末や車内モニターなどによってドライバーの体調を「どこまで正確に把握する必要があるのか」という課題に対して、「どこで仕切り線を引くのか」という判断の難しさだ。

 そこには当然、PL(製造者責任)法という「法的リスク」が立ちはだかる。自動車メーカーの多くは現状、「オーバーライドは可能だ」と説明する。各社内、または産学官連携による基礎研究や実験が行われており、「定量化したデータ」を基に「オーバーライドは可能だ」というのだが、本音では「実社会で、本当に運用できるのか」という不安を抱いている業界関係者は数多い。

 こうした「何かと面倒な自動運転」ではなく、「オーバーライドしない自動運転」として「無人運転」の実業化を目指しているのが、グーグルやロボットタクシーである。無人運転派にとってオーバーライドは「緊急時の対応」なのである。無人運転とは、「誰も乗っていない」のではなく「ドライバーレス(ドライバーがいない)」を指すのだ。

 こうした「自動運転の基本」について、メディアを含めてもう一度認識する必要があるだろう。

協調領域と競争領域

 2015年が「自動運転元年」と感じるのは、「自動運転の実用化」の議論が急激に進んだからだ。

 国内では、経済産業省と国土交通省が2015年6月24日、「自動走行ビジネス協議会」に関する中間とりまとめを発表した。この協議会は「いきなり呼ばれて、何が始まるのかと困惑した」(自動車メーカー関係者)という声が聞こえてくるように「いきなり」行われた。

 日本政府における自動運転といえば、内閣府によるSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の中での協議が中核だという認識が強い。内閣府が調整役となり、国土交通省、経済産業省、総務省、警察庁の関係省庁が共同歩調を取り、そこに自動車メーカー各社が同期するという「オールジャパン」体制が売り物である。

日本再興戦略のもとで推進されるSIP 日本再興戦略のもとで推進されるSIP。自動運転はSIPのプログラムの1つになっている

 換言すれば、船頭さんが多く、「議論するための議論」に陥りやすい。具体的な目標を2020年としているものの、2020年開催の東京オリンピック・パリンピックを意識し過ぎることで、2020年以降の「サスティナブル(継続可能)」な自動運転に対する議論がまとまりにくくなる可能性がある。

 そうしたSIPの実態を察知した経済産業省と国土交通省は、「ビジネス」という「現実社会」を直視するための名目により、国内自動車メーカーによる自動運転の未来について「再考する場」を設けたのだと思う。

 ここでは、「協調領域と競争領域」に対する「交通整理」が行われる。インフラなどの協調領域について自動車メーカーは「争いを避けて、一丸となることが日本の強みとなる」という解釈だ。

 だが「現実のビジネス」においては、本来「協調領域」と思われていたところで競争が始まっている。

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