空気圧アクチュエータを応用した内視鏡ホルダーロボット「EMARO」は、手術支援ロボットとして見ると短期間で開発できた製品といえる。早期に製品化できた背景には、医療機器へのニーズを的確に把握している医師からの提言があった。
東京医科歯科大学は2015年12月17日、東京都内で記者懇談会を開催し、同大学 生体材料工学研究所 バイオメカニクス分野の教授を務める川嶋健嗣氏が「医工連携による低侵襲外科手術支援用ロボットシステムの研究開発」をテーマに講演を行った。
川嶋氏は、2015年8月に発売された空気圧駆動型内視鏡ホルダーロボット「EMARO(エマロ)」の開発を主導したことで知られる。EMAROは、腹腔鏡手術で内視鏡を操作するスコピストの替わりに内視鏡を保持し、執刀医自身が頭に装着したジャイロやフットスイッチで内視鏡を操作できるようにしてくれる手術支援ロボットだ。
内視鏡を保持/操作するアームには空気圧アクチュエータが応用されている。空気圧アクチュエータは、空気の圧縮性による柔らかな応答性や、重量対出力比の高さによって減速機が不要になることなどが特徴。川嶋氏と東京工業大学 精密工学研究所 准教授の只野耕太郎氏が、手術支援ロボットに最適と考え、10年以上研究を続けてきた技術だ。
川嶋氏は、「東京工業大学と東京医科歯科大学の間で、月に1回程度、医歯工連携定例会を開催していた。そこで東京工業大学側が持つ空気圧技術というシーズと、東京医科歯科大学側が力覚をフィードバックしてより操作しやすい腹腔鏡手術の手術支援ロボットがほしいというニーズが合致し、2003年に空気圧技術を応用した手術支援ロボットの開発が始まった」と語る。
この腹腔鏡手術の手術支援ロボットは「IBIS」と呼ばれ、現在進行形で開発が進行中であり、現在は試作6号機が最新の成果だ。IBISを商用化する場合は、クラスI〜IVまである医療機器のクラス分類のうちクラスIII(高度管理医療機器)であり、厚生労働省が管轄する薬事承認の取得までに臨床試験などで費用と時間を要する。川嶋氏も上市時期を2019年ごろに設定している。つまり、2003年の研究開発開始から数えると、足かけ16年かかることになる。
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