吉原氏は、今回開発したEV鉛蓄電池 組電池システムについて、「急速充電が可能で、メンテナンス(補水)フリー、ハイパワーである特徴を生かし、バッテリーフォークリフトに限らないさまざまな電動車両、蓄エネルギー分野への展開が可能」と主張する。
鉛バッテリーの長所は安価であることだ。「リチウムイオン電池やニッケル水素電池などに注目が集まっているが、まだまだコストが高い。顧客から『鉛バッテリーの10倍くらいする』という話も出ている」(吉原氏)という。この安さを理由として、工場内で使うAGVやゴルフカート、フォークリフト、小型電気自動車、福祉車両などの電池として鉛バッテリーが利用されているのだ。
しかし鉛バッテリーには短所が2つある。1つは寿命。リチウムイオン電池やニッケル水素電池は寿命として10年をうたうことが多いが、鉛バッテリーは今回のEV鉛蓄電池 組電池システムでも5年だ。吉原氏は「高価だが10年使える新技術か、値段が安くても5年もつ鉛バッテリーかといったようなすみ分けが進むだろう」としている。
もう1つの短所が、リチウムイオン電池などと比べてエネルギー密度が低いこと、つまり重くなることだ。コマツのFE25-1に採用されたとEV鉛蓄電池 組電池システムの容量は26kWhで重量は774kg。これに対して、日産自動車の電気自動車「リーフ」のリチウムイオン電池パックは容量が24kWhで重量は約300kg。両社とも容量はほぼ同じなのに、重量は鉛バッテリーが2倍以上になっている。
しかし吉原氏によれば、採用基準はエネルギー密度の低さだけではないと指摘する。「乗用車は重量が約1トンあり、それを電気自動車にすることを考えると、鉛バッテリーは確かに重い。しかし、今回EV鉛蓄電池 組電池システムを採用していただいたバッテリーフォークリフトのように重量が4トン近くもあれば、電池パックの重量が与える影響も変わってくるので、鉛バッテリーにもチャンスはある」(吉原氏)。
吉原氏は「エネルギー密度の低さ以上に、鉛バッテリーを組電池システムとして安定して効率よく利用する手法が今まであまりなかったことが、電動車両への採用が拡大しなかった原因の1つになっていた。今回のEV鉛蓄電池 組電池システムは、そういう意味で画期的な製品になっているのではないか」と述べている。
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