Googleが街を再構築する〜街のIoT化がもたらすもの〜Sidewalk(2/5 ページ)

» 2015年08月27日 07時00分 公開

街に無料Wi-Fi接続を提供する「LinkNYC」

 2014年11月17日、米国ニューヨーク州ニューヨーク市が、市内の公衆電話ボックスを市営Wi-Fiアクセスポイントに置き換える「LinkNYC」計画を発表した。

 具体的には、Qualcomm、Control Group、Titan、Comarkなどが参加するコンソーシアム「CityBridge」が、公衆電話ボックスの代わりに「Link」と呼ばれるキオスク端末を設置し、インターネットアクセスサービス等を提供するというものだ。

 ニューヨーク市において公衆電話は、15年間単位のフランチャイズ契約で事業者と契約しており、これまで電話以外については単に広告やポスター等を貼るための「広告塔」としてしか利用されてこなかった。今回のLinkNYC計画は、その状況を一新し、市民サービスに主軸をおいた活用法を考えたところから生まれてきている。

 Linkは、半径150フィート(約46m)にいる人に対し、24時間無料のWi-Fiアクセスを提供する。また、Linkから米国内無料通話が可能なほか、緊急電話サービス「911」や苦情センター「311」にも通話可能である。

 その他にも携帯電話の無料充電等サービスが提供され、Linkに設置されたタッチスクリーン式Android端末より行政関連含む各種情報サービスにもアクセス可能となっている。運営コストは、Link側面のデジタルディスプレイに表示される広告からの収入で賄われる仕組みとなっている。

 2015年9月より1万台の「Link」を設置し、サービスを提供開始する予定だ。この取組を通じて、ニューヨーク市は向こう12年間で5億ドル(約618億円)の広告収入を期待している。広告から得られた収入は、CityBridgeメンバー間でレベニューシェアされる模様だが、その割合については明らかになっていない。

 そのLinkNYC計画において、Qualcommはネットワーク部分を、Control Groupは無料公衆Wi-Fiスタンドのユーザーインタフェース開発を、Titanは広告ネットワークの提供を担当しており、SidewalkはこのLinkNYC計画の中核である3社中の2社、Control GroupとTitanを買収し、合併したことになる。

 本計画の意義についてDoctoroff氏は「私たちは常に平等について考えている。人々に無料でコネクティビティを提供すると同時に、政府がより収入を上げるためのニーズを満たしている」と説明している。LinkNYC計画はあくまでもニューヨークでのプロジェクトとなるが、同社の初の事例としては申し分ないとしている。

 FCC(Federal Communications Commission :連邦通信委員会)によれば、インターネット大国と目される米国にあっても、5500万人はまだアクセス手段を持ちあわせていないというのが実情のようである。都市部よりも地方の方がこの状況は深刻である中で、Doctoroff氏はLinkNYCのようなプロジェクトは情報格差(Digital Divide)を埋められるのではないかと考えているようだ。

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