図2は、データの種類/速度から見たHISのデータのマッピング例を示している。医事会計システム、人事管理システム、病院物流管理システムのいずれも、日常の定型業務から発生する構造化データが主体であり、処理のタイミングについては、日次、月次、年次といったバッチ処理が主流である。
HISだけを見るとビッグデータに発展する可能性は小さいが、例えば、次回取り上げる予定の臨床情報システム(CIS)の代表例である医用画像情報管理システム(PACS)との間でデータ連携しようとすると状況が変わってくる。
医用画像は非構造化データが主体で、2Dから3Dへと大容量化が進んでおり、処理の速度も、バッチ処理からリアルタイム処理まで幅広いのが特徴だ。構造化データのバッチ処理を前提としたHISの運用体制のままでは対応しきれないので、PACSをつかさどる放射線部門主導でデータ連携の仕組みづくりと運用体制の構築を図る必要が出てくる。
また前述の例のように、病院物流管理システムがIoTを介してRFIDと連携しようとすると、構造化データと非構造化データの中間の性質を有するセンサーデータが入ってくることになる。一般的にセンサーデータの場合、一定量のデータがデバイスに蓄積された時点で収集/分析することが多く、バッチ処理に近いフローで対応できた。今後、リアルタイムのモニタリングが入ってきたら、データ連携の仕組みや運用体制を変更する必要が出てくる。
HISは、情報通信系技術をベースとする「診療情報管理士」や「医療情報技師」が中心的な役割を果たしてきたが、ビッグデータ/IoTの観点からは、今後、電子制御系技術をベースとする「臨床工学技士」「診療放射線技師」といった専門職と協働する機会が増えてくるだろう。
笹原英司(ささはら えいじ)(NPO法人ヘルスケアクラウド研究会・理事)
宮崎県出身。千葉大学大学院医学薬学府博士課程修了(医薬学博士)。デジタルマーケティング全般(B2B/B2C)および健康医療/介護福祉/ライフサイエンス業界のガバナンス/リスク/コンプライアンス関連調査研究/コンサルティング実績を有し、クラウドセキュリティアライアンス、在日米国商工会議所等でビッグデータのセキュリティに関する啓発活動を行っている。
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