フラワー・ロボティクスはAIと移動機能を持った“機能拡張型家庭用ロボット”「Patin」(パタン)のプロトタイプを披露した。Pepperとは真逆に設計から生産まで、メイドインジャパンで「家庭用ロボット」の定着を狙う。
フラワー・ロボティクスは2015年6月23日、AIと移動機能を持った“機能拡張型家庭用ロボット”「Patin」(パタン:フランス語で「スケート靴」の意味)のプロトタイプを発表、デモンストレーションを行った。一般への販売開始は2016年後半を予定する。
PatinはAIと移動機能を有する「本体」、クラウドとの通信機能と充電機能を有した母艦となる「ピット」、本体に取り付ける「サービスユニット」で構成されており、サービスユニットを交換することで、機能を切り替えながら利用できる。
プロトタイプの本体はNVIDIAのSoC「Tegra K1」を搭載した開発用ボード「Jetson TK1」、OSにLinuxを搭載しており、4輪のオムニホイールで移動する。外環境認識用のセンサーとして深度カメラ、熱画像カメラ、マイク、単眼カメラ、落下防止センサー、赤外線受発光機能などを備えており、サービスユニットを搭載しない状態でも音声によるテレビリモコン操作などが行える。
搭載するAIは利用場所の空間や人物/物体検知などを基に、利用者の嗜好や利用したサービスユニットの情報、置かれた場所に応じたデータを収集、クラウドと連携して分析することで“気が利く”反応をするように学習していく。ただ、喜怒哀楽を発揮するような方向への学習は行わない。「家庭用ロボットなので“飽きられないように”が大事。あえて過剰なアクションや反応を出さないようにしている」(フラワー・ロボティクス CEO 兼 チーフロボットデザイナー 松井龍哉氏)
サービスユニットについてはSDKを提供することで、サードパーティーの参入を促す。同社では既に家電、音響、家具、自動車、ヘルスケア、飲食など各業種との取り組みを計画しているが、松井氏は「扇風機や加湿器をサービスユニットにすれば“家庭内を自律移動する”特徴を生かせるだろうし、ロボットアームを取り付けるのも面白いだろう」と、さまざまなアイデアを歓迎すると語る。
PatinはLinux上に構築されたROS(Robot Operating System)で各機能モジュールの制御を行うが、ロボット開発の経験がないとROSの扱いは困難が伴うことから、Eclipseベースの開発環境を提供し、ROSの知識に乏しい開発者でも開発に携われるようにする。Gazeboを用いたシミュレータも用意されており、全方位移動や3次元測定、ナビゲーション機能などを仮想環境でテストできる。ドキュメントは日英で用意されており、チュートリアルも含まれる。
販売開始は2016年後半が見込まれており、同社では2015年秋から量産に向けての検討に入る。量産委託先は国内の製造業とする計画だ。単純に価格だけを見れば海外へ委託する方が有利となるが、松井氏は高品質化に生産地との関係構築が必要と判断、あえてメイドインジャパンにこだわってのロボット生産に着手する。Pepperを手掛けるソフトバンクが、世界最大規模のEMSであるFoxconnと提携するのとは真逆のアプローチといえる。
Patinの価格は未定だが、2016年の登場時にはクラウドなど関連するサービスと2〜3のサービスユニットを同梱して約100万円での提供になる見込み。一見すると高額だが、Pepperが3年間の各種契約込みで約100万円になることを考えると、同レベルとなる。また、松井氏は量産効果による価格低下も示唆し、低価格化の余地があることを伺わせた。
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