そして2012年になって、プラットフォームである「Parallella Board」の開発に着手する。「高価なコンピュータを使わなくても、誰にも手が届く値段でパラレルコンピューティングに触れられるようにしたかった」とオロフソン氏はその目的を語り、重ねて、完成したボードについて「電力消費も5W以下であり、ARMのプロセッサもメモリも最適な性能を発揮してくれている」と自信を示した。
「Parallella Boardがなぜオープンソースのハードウェアで作られなければならなかったか、知っておくべき事柄が1つある。オープンでなければ、インテルなどの巨大企業と立ち向かうことができなかったからだ」
「オープンソースであれば、使用者が開発者になってくれるし、自分でいろいろと付け加えることができる。リスクも減らせ、コラボレーションもしやすい。これまで作り上げられているエコシステムが気に入らなければ、自分で作り上げればよい。人生は短い。いろいろな人が関わることで、作り上げられるものも多い」(オロフソン氏)
Parallella Boardの試作品(Rev.A)は2013年5月に完成した。このバージョンでは消費電力が大きく、また、HDMIが動作しないなど不満も残るものであったが、42枚のボードを組み合わせた分散処理に成功した。そして同年8月には5万個のEpiphanyを作成、歩留まりも約90%と高く、大成功だったという。
手応えを得たオロフソン氏は新プロジェクトを2013年12月にスタートしたが、工期の遅れとコストの大きさに会社がつぶれそうになってしまった。ベンチャーキャピタルより3600万ドルの資金援助を得ることができたものの、エンジニアの辞職が相次ぎ、自分1人でのリスタートとなってしまった。「5000人の顧客が待っていたが、人生最悪の時だった」とオロフソン氏は当時を振り返る。
Rev.Cとなった製品版は部品納期の遅れなどもあって、出荷開始が予定より1年遅れたものの、2014年5月までに予約分の出荷を完了した。スタートアップならではの困難を乗り越え、今ではRS componentsやDigi-Key、Amazonでも取り扱われるまでとなり、いつでも製品を顧客に届けられるようになった。
2014年1月に開催された国際スーパーコンピューティングカンファレンス(Supercomputing Conference)では、32枚のParalella boardを使って15×15×68センチというタワー状にしたデモ機を出品。かなりの評価を得ることができた。しかし実導入に至るまでの興味は持ってもらえず、「みんなインテルを選んでしまった」とオロフソン氏。消費電力の面やエコシステムの面などで選ばれなかったのだろうと推察したが、反省すべき所もあったと言う。
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