「実践戦略」を理解する上で重要なのが「サイバー・フィジカル・システム」の最小構成要素として新たに定義された「インダストリー4.0コンポーネント」の概念だ。工作機械などの装置はもとより、個別のモータ軸、端子台やスタンドアロンのソフトウェアに至るまで、工場の構成要素を全て「オブジェクト」として認識し、これを「インダストリー4.0 規格」に準拠した通信規格(OPC-UA)で対等につなげるというのだ(図4)。
「インダストリー4.0コンポーネント」に対応していない機器(オブジェクト)には全て「管理シェル(図中緑色の領域)」なるラッパーをかぶせることで「インダストリー4.0規格」に準拠した通信インタフェースやデータフォーマットに対応させる構想である。これは既存設備を生かしつつ徐々に生産システムを基幹系の「インダストリー4.0規格」に対応させていくマイグレーションプランとしても合理的だが、本質的な意味合いは工場の機器を全て基幹系システムに対して等価的かつ透過的に「見える化」することにある。
「インダストリー4.0規格」の機器はオフィスに設置するネットワークプリンタと同じ感覚で基幹系システムにつなぐことができるようになる、と捉えるとイメージが湧きやすいかもしれない。
オフィスプリンタではどんなCADアプリで設計した図面も、どこのメーカーのプリンタが出力先になっても自由に印刷できる。これと同様に、インダストリー4.0では工作機械だろうと産業用ロボットだろうと、規格に準拠した「管理シェル」が準備されていればメーカーを問わず自由に組み合わせて基幹系システムにつなぐことができ、CAD/CAMでもERP/MESでもPLMでもさまざまなアプリケーションを、メーカーを問わずに組み合わせて使えるようにすることを目指しているわけだ。もし工場のあらゆる機器が「IT周辺機器」として基幹系システムから認識できるようになると、生産性向上に対するインパクトは非常に大きなものがある。
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