IoTの老舗団体「IPSO Alliance」は何を手助けするかIoT観測所(8)(2/2 ページ)

» 2015年04月16日 07時00分 公開
[大原 雄介MONOist]
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IPネットワークの啓蒙

 そうした事情もあり、IPSOはIETFと協力して6LoWPANの標準化に力を注ぎ、最終的にはRFC6282として2011年9月に標準化が完了する。さらに、RFC6550として標準化されたRPL(IPv6 Routing Protocol for Low-Power and Lossy Networks)を組み合わせる形で、ZigBee IPとして正式なZigBee規格となり、現在ZigBee Allianceがこれを推進している状況である。

 その意味では、IPSOの働きかけ(?)によってZigBeeがIP化を完了した、とも言えるのだが、残念なことにそのZigBeeの立ち上がりが相変わらず鈍いまま、というのは、IPSOからするとやや誤算だったか。最近Thread GroupがZigBee Allianceとコラボレーションするという発表がなされたのは、もう少しZigBeeの立ち上がりを加速しないと、他の規格(その最右翼がBluetoothであろう)にマーケットを奪われかねないという危機感から来ているのではないかと思う(ZigBee Alliance and Thread Group Collaborate to Aid Development of Connected Home Products)

 話をIPSOに戻す。では最近、IPSOが何をしているのかというと、IP Networkがエンドノードも利用できることを前提に、その上でのシステム構築に関する啓蒙活動にシフトしつつある。2011年にはCoAPをベースとしたEmbedded Web Servicesの構築方や、IPベースでIoTのシステムを構築する際のセキュリティに関する注意点の紹介などのセミナーを実施している(WebEXフォーマットのセミナーの録画はこちらから視聴可能)。

 また、定期的にさまざまなイベントに参加している(Webサイトには最近のイベントしか掲載はされていない)。直近で言えば、2015年5月12日〜13日にサンフランシスコで開催される「IoT World」にはEvent Sponsorという形で参加するなど、それなりに積極的である。

 もう少しだけ具体的な取り組みもなされている。冒頭に書いたとおりIPSOはSmart Objectを作ることを目的としているが、このSmart Objectを定義する作業も行われている。これに関してはOMA(Open Mobile Alliance)が定めたLWM2M(OMA Lightweight M2M protocol)を利用し、この上にSmartObjectの定義を追加する形だ(Smart Object Guidelines)

 他に、Smart Objectsの実装を可能にする簡単なハードウェアや、その上で動作するソフトウェアなどのページもあるが、こちらは実際にページの先のリンクをたどってみると分かるが単なるリンクだけであって、特にIPSOが何か作業をしている訳ではない。「一応リンクは張りました」という、ややアリバイ作り的な雰囲気を感じなくも無い。

 全般としてIPSOは、他のIoT団体に比べると「ゆるい」感じは否めない。冒頭に書いた「相互運用性のテスト」にしても、IPSO自身で主催するのはIETF Meetingの際に行われるものだけで、あとはETSIのPlugtestとかCSEP、あるいはZigBee Allianceが予定しているPlugfestなどに協賛する形を取っており、IPSOがそこに参加していることすら認識できないかもしれない。

 これはメンバー企業を見ても分かる。既に設立から6年以上経過しているのに、現時点でのメンバー企業はPromotor(会費は年間5000ドル)が19社、Contributor(同2500ドル)が24社でしかない(他に、Contributorと同じ資格だが、ベンチャー企業向けに年間1000ドルのInnovatorという枠もあるが、今のところリストには1社もない)。

 ではこれらの企業は何をメリットに参加しているか、といえばIPSOそのものというよりは、IEEEやIETFその他の標準化団体への影響力を保持しておきたい企業がここに参加するという感じになっているのが実情だ。これは、TAB(Technical Advisory Board)のメンバーを見れば明白で、Itron/Ericsson/Cisco/SAP/東芝といったIEEEやIETFなどに影響力の大きいキーパーソンが就任している。その意味では、こうした標準化団体のフロント組織と言っても差し支えないかもしれない。

 これまで紹介してきたIoT団体とはだいぶ毛色が異なるが、こうした組織もまたIoTという枠の中で活動しているわけだ。

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