筆者の研究室で、ゲームに見られるバグの「悪いバグ」をさらに分類したところ、大きく分けて13種に分類できました。上位6種で75%を占めますが、今回は悪いバグの「少数派」について説明していきます。
これまで4回に渡り、組み込み系の代表格であるゲームのバグについて取り上げてきました。今回は、前回(山浦恒央の“くみこみ”な話(71):「悪いバグ」のケーススタディ )の続きとして、ゲーム系バグのケーススタディを解説します。
前回は、筆者の研究室で行っているゲーム品質の研究を紹介するなかで、報告されている不具合の75%を紹介しましたが、今回はあまり報告されていない残りの25%の不具合を説明していきます。
筆者の研究室では、ソフトウェア工学の研究テーマの1つとして、「ゲーム系ソフトウェアの品質」を扱っています。ゲームはユーザー(プレーヤー)こそ非常に多いのですが、ソフトウェア工学の研究テーマとしてはかなりマイナーな分野と言えます。主な内容は、企業がWebサイトで報告している不具合を収集、分類するというものです。結果は「その他」を含めて13個の分類となりました。
前回の本コラムでは、全体の75%を占める6種類のバグ(「ユーザー・インタフェース」「レベル・デザイン」「スキル」「アイテム」「ステータス」「データ」)を紹介しました。今回は、残りの25%にあたる「ネットワーク系」「操作系」「音楽系」「AI系」「パフォーマンス系」「ハードウェア系」を説明していきます。
近年はネットワーク対応のゲームが増えています。「ネットワーク」という言葉を使わず、「オンライン」と呼ぶ場合もあります。ネットワーク対応型ゲームの最大のメリットは、「見知らぬユーザーとプレイできる」「新しいゲームコンテンツをダウンロードできる」があります。
一昔前、ゲームを複数人でプレイするには、友達を家に呼ぶ必要がありました。また、過去のゲームはネットワークに接続しないで遊ぶことを前提で開発しました。よって、ゲームの発売後は、バージョンアップ版が出ない限りゲーム内容は変わりませんでした。近年、ゲームではネット上で配信され、長くゲームが遊べるようになりました。
ネットワーク対応ゲームには良い点もありますが、不具合も少なからず報告されています。主な内訳は「接続に関する不具合」と「(DLC)追加コンテンツ」が代表格でしょう。以下にそれらを詳しく説明します。
接続系の不具合は、ネットワークに正しく接続できず、ゲームを楽しめないという不具合です。例えば、「サーバに接続できない」「通信が突然切れる」「他のプレーヤーとのマッチングがうまくいかない」などの例があります。
ネットワーク系の不具合は、個々の環境の問題と密接に関係します。例えば、国を超えてプレーヤー同士がつながるので、回線速度が異なります。こちらが高速でも、相手がそうとは限りません。また、接続時のサーバの混雑具合も異なります。これらは、ネット系ならではの不具合です。
DLC(DownLoad Contents)とは、追加コンテンツのことです。例えば、購入時のバージョンには付いていないストーリーやコスチュームなどをダウンロードして使用するものです。無料から数千円超まで価格も多種多様です。
DLC系の不具合は、追加コンテンツをダウンロードできなかったり、購入してダウンロードしても使用できないなどの不具合です。プレーヤー側は、高揚感たっぷりでコンテンツをダウンロードしたのにうまく機能せず、大きなフラストレーションを感じることになります。
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