自動車技術会は、各国の学生チームが安全問題解決のための技術アイデアを競う「2015年 学生安全技術デザインコンペティション(SSTDC)」の日本大会を開催。スウェーデンで開催される本大会への出場権をかけて、東京都市大学、芝浦工業大学、日本大学の3チームがそれぞれのアイデアを競った。
自動車技術会は2015年3月16日、東京都内で「2015年 学生安全技術デザインコンペティション(SSTDC)」の日本大会を開催した。SSTDCは各国政府の道路交通政策担当者および自動車メーカー、大学機関などで構成される「自動車安全技術国際会議」のプログラムの1つとして行われている国際学生コンペティション。各国の学生チームが、安全問題解決のための技術アイデアを競う。今回の日本大会で優勝したチームには、2015年6月にスウェーデンで開催される本大会への出場権が与えられる。会場では、書類選考を通過した東京都市大学、芝浦工業大学、日本大学の3チームが日本代表の座を懸けてプレゼンテーションを行った。
東京都市大学チームは、車両の安全性能を検証する試験の1つである歩行者脚部保護性能試験(以下、脚部試験)の新たな手法を提案した。脚部試験とは、人間の脚部を模倣した脚部インパクタを車両に衝突させることで安全性の検証を行うものだ。東京都市大学チームは、現在、脚部試験において評価対象となっているのがバンパーの中央部分に限られている点に着目した。歩行者がバンパーコーナーに衝突するケースも多数報告されている一方で、コーナー部分に関する脚部試験の必要性や妥当性に関する検証は進んでいないという。
また、脚部試験で利用されている脚部インパクタは、人間の脚部のみを模倣している。だが実際の事故を想定した場合、衝突による反動を受けた人間の上体部が脚部への損傷に影響を与える可能性もある。そこで東京都市大学チームは、より事故再現度の高い脚部試験を検証するため、人間の上体部も再現した新型のダミー(人形)や試験装置の製作に取り組んだ。
試験装置やダミーは1/7スケールのものを製作。同様のスケールで現在の脚部試験に利用される脚部インパクタも製作し、ダミーとの比較実験によって、衝突時に人間の上体部が脚部の損傷に与える影響を検証した。ダミーや脚部インパクタを衝突させた際の挙動は、高速度カメラで撮影を行い、画像解析によってせん断変位を分析している。障害値は加速度計を用いて減速度を測定することで算出した。
比較実験では、衝撃を受けた際の脚部の最大加速度は上体部を再現したダミーの方が増加するという結果が得られたという。これを受け東京都市大学チームは、実際の脚部試験においても脚部インパクタだけでなく、人間の上体部も再現したダミーを利用するとともに、バンパーコーナーとの衝突など、実際の事故に近い条件を利用した障害評価を行うべきであるという提言を行った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.