決勝戦に進んだもう一方のチームはインドネシアの「PT.Santoso Teknindo(サントソ・テクニンド・インドネシア)」(STIチーム)だ。切削工具などを製作する企業である。インドネシアは予選の段階からチームのレベルが高かったそうで、本戦でもその実力を示すことになった。
決勝戦の前のコメントで松宮氏は、「コマはこんな形だという概念が(自分たちには)ない。海外には負けないということを証明したい」と宣言。試合は「最後まで分からないのがコマ大戦」(ゲストの歌手・AOIさん)という言葉通りの展開になった。
インドネシアのコマは重い低重心タイプだ。「いわゆる“王道のコマ”で安定感がかなり良かったのはもちろんだが、それにもまして投げ手が冷静だった。コマの性能を本番でしっかりと発揮しているという印象を持った」(落守氏)。現地で見ていても、投げ手のアディ・サソンコ氏の落ち着きと集中力は相当なものだった。1投目は外したものの、2投目は縁から戻ってきた後に当たってきっちり倒し、大きな歓声が上がった。
この次はSTIが負けたが、相手に当たってもなかなか倒れない粘り強さを見せた。続いてまたSTIが勝ったものの、2回続けてカジミツが勝利。優勝はカジミツに決定した。
優勝後のあいさつで福富氏は「勝てて本当によかった。足をひっぱって盛り上げたのも計画通りです」(決勝戦2回の負けは福富氏が投げた時)と言って会場を笑わせた。「私たちが作ったコマは『本当にコマか』という意見もあるかと思うが、精度を求めるのも日本の技術、(一方で)基本概念を変える発想力も日本の技術だと思う」と語った。
松宮氏によると、一番の強敵はやはり決勝戦のSTIチームだったとのことだ。「投げ方も上手く、かなり練習していることが感じられた。何よりも『日本の会社に勝つんだ』という気迫がすごく、ホームでなければ負けていただろう」(松宮氏)。一方、一番の勝負所は古川電機製作所との1試合目だったといい、初戦からぶつけられていたら状況は変わっていたかもということだ。
福富氏はコマ大戦に初めてジャイロコマを持ち込んだ本人だ。ジャイロコマはモーターによるジャイロ効果によって、コマをより長く回すことが可能だ。松宮氏は以前にも物議を醸した無敵のコマ「ぶっ飛ばし君」を作ったが、これは「福富氏のジャイロゴマと対戦したい」と思って作ったものだという。
2人は全日本製造業コマ大戦 大田区場所の「ユニーク部門」(外形が直径2cm以下という制限のみ)で出会った。アイデアで勝負する2人はすぐに意気投合。今は家族ぐるみの付き合いだという。松宮氏が中部ブロック予選通過後に、「世界大会にジャイロコマで出場しよう!」と福富氏を誘ったという。
今回の出場では、福富氏が電池・モーターなどの配線、ルール解釈を担当し、対戦戦略、機械加工と実際に回してみての不具合や調整を松宮氏が担当したそうだ。
松宮氏によると「ルールをどれだけ変えてもアイデアはそれを越える」とのことだ。ヒール感を醸しだしていたが、それも常識の枠を自由に超える発想力の結果だろう。発想力だけではなく、それを具現化してしまう実力を見せつけ、今回のコマ大戦を大いに盛り上げた。
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