日本はロボット大国といわれるが、その根幹を担っているのはモノづくりの現場や建築現場などで利用される産業用ロボットである(関連記事:いまさら聞けない産業用ロボット入門〔前編〕)。そのため、モノづくり分野は以前からロボット導入が進んだ業界だったといえる。例えば、自動車産業における溶接、塗装工程や電気・電子産業における部品装填工程など、多くの製造現場でロボットの活用が当たり前のものになっている。
しかし一方で、これらの導入は自動車や電気電子産業における大企業の製造現場に限られてきたといえる。中堅・中小企業にとっては、金銭面や技能面で導入へのハードルが高い存在だった。また分野によっては大企業でもロボットの導入が進んでいない領域も存在する。これらのまだ普及が進んでいない領域へのロボット活用推進がポイントとなる。
そこで、ロボット新戦略では、これらの普及に向けてカギを握る存在として、SIヤー(システムインテグレーター)の存在を強調している。中堅・中小企業や現在導入が進んでいない分野では、導入を進めるための技術やノウハウがなく、それを支える人材もいない。これらに対して導入を支援し、生産ラインを作り上げるような導入方式が必要だ。
具体的には、導入実証実験などによるSIヤーの対応能力の向上に加え、ハードやソフトのモジュール化やそれらを束ねる共通基盤を普及させることで、多様なメーカーのロボット技術を統合するプラットフォームを構築していく方針だ。これを実現することで誰もが簡単にロボットを活用できる状況を生み出し、システム導入に関係するコストの削減やスケールメリットを実現する事業構造の構築を実現しようとしている。
一方で、これまでロボット活用が進んでこなかった「三品産業」(食品、化粧品、医薬品産業)などでのロボット活用の拡大に取り組む。
食品産業については、単純な食品の製造工程に係る自動化や、弁当やお総菜などの盛りつけなどのバックヤードの工程において、パートなどを多く雇い、労働集約的な作業を行っている。こうした作業に対応できるロボットの開発・導入などに取り組んでいくとしている。また、化粧品産業や医薬品産業についても、費用対効果や作業工程のタクトタイムを満たすものについては、積極的にロボット活用を促し、より一層労働生産性を高めていくという。
導入領域を拡充していくのは、ロボット技術の進化も不可欠だ。産業用ロボットの活用にはセッティングやティーチングが必要になり、頻繁に工程や配置を変更しなければならない準備工程や段取りなどの作業はロボット化に不向きだった。これらを解決するために、汎用的かつ小回りのきく多能工ロボットの開発を進めていくとしている(関連記事:ワタシガツヅキヲツクリマス! ――双腕ロボットが人の代わりに生産する時代)。また、人とロボットが協調して働くような、人とロボットの新たな関わり方やロボットによる匠の技の実現についても模索する方針を示す。
一方で、ロボットの高度化に関係する、機器間連携(ロボット同士、ロボットと工作機械、ロボットと部品など)や、ネットワーク型ロボットの開発・実証などにも取り組んでいく。IoTを背景とした柔軟で常に最適化された生産システムの構築によるこれまでの限界を超えた生産性の向上や製品そのものの品質の向上に向け、ロボット革命イニシアティブ協議会の活動を通じて、工場全体があたかもロボットとして機能するような全工程の徹底した自動化や世界最先端の生産システムをつなげていく上で必要となる標準化を推進していくという(関連記事:ドイツが描く第4次産業革命「インダストリー4.0」とは?【前編】)。
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