東北大学大学院の阿部高明教授らは、便秘症の治療薬であるルビプロストンが腸内環境を改善して体内の尿毒素蓄積を軽減し、その結果、慢性腎臓病の進行を抑える効果があることを明らかにした。
東北大学は2014年12月19日、同大大学院医学系研究科および医工学研究科病態液性制御学分野の阿部高明教授らが、慶應義塾大学先端生命科学研究所の福田真嗣特任准教授、曽我朋義教授らの研究グループと共同で、便秘症の治療薬として使用されるルビプロストンに慢性腎臓病の進行を抑える効果があることを発表した。
慢性腎臓病は、腎臓の機能が進行的に低下していく病態で、現時点では進行を十分に抑制することが困難とされている。慢性腎臓病の状態では、尿として排泄される「尿毒素」が適切に排泄されず血中に蓄積するため、これが腎臓や心臓・脳などの各種臓器に悪影響を与え、腎臓病自体も悪化させる。こうした尿毒症と呼ばれる症状を軽減させることが、腎臓病の進行を抑制する手段として期待されているという。
また、腎臓病で蓄積する種々の尿毒素のうち、最も悪い作用をするというインドキシル硫酸などの産生には、腸内細菌叢が関係することが知られている。さらに近年、慢性腎臓病では腸内細菌叢を含む腸内環境全体が悪い方向に変化していることも明らかになっていた。
同研究では、便秘症の治療薬であるルビプロストンが、腎機能の悪化に伴って変化する腸内環境を改善させることにより、体内の尿毒素蓄積を軽減させ、その結果、腎臓の障害進行を抑制する効果があることを明らかにした。
実験では、慢性腎不全の状態にしたマウスにルビプロストンを投与し、腎臓病の進行が抑制されるかを検証。投与していないマウスに比べ、腸液の分泌が増加し、腎不全時の腸壁の悪化が改善された。また、次世代シークエンサーを用いた腸内細菌叢の解析では、腸内の善玉菌の減少も改善していることが明らかになった。さらに、腸内細菌に由来する尿毒素とされる、インドキシル硫酸や馬尿酸などの物質の血中濃度も減少したという。
同研究の成果は、ルビプロストンが慢性腎臓病の新しい治療薬となり得る可能性を示すもので、今後は臨床での応用が期待されるという。また同研究は、すでに国内外で特許申請された、日本オリジナルの研究となる。
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