最後に紹介するのが「リレカチ」の最右翼ともいえるSilriumの作品である。PCのキーボードを打つとUSBポートにつながったリレーが「カチカチ」と打鍵する。ただそれだけのガジェットだ。
会場ではこのガジェットのキット販売やワークショップが行われた。リレーを業務で扱っている技術者には絶対に思い浮かばない発想であろう。読者の評価は様々であろうが、去年も同じ作品を見た記憶がある。ブースの選抜競争が厳しいなか今回も選ばれているということは、メイカーの世界で「リレカチ」ブームがすぐそこまで来ているのかもしれない。
これは番外編であるが、上記と同様に実用的という尺度では測りきれない作品の1つが東芝ブースで展示されていた「FlashAirで無線SPI Master」だ。
FlashAirとはSDカードに無線LAN機能(Wi-Fiアクセスポイントとhttpサーバ)を内蔵した製品で、本来はデジカメにセットし、撮った写真をスマートフォンなどで共有するのためのものだ。しかしこの会社の誰がどこでどんな勘違いをしたのか定かではないが、このSDカードのピンのうち5本をGPIO(汎用入出力ポート)として使えるよう、ユーザーに開放したのである。
これらのポートへのアクセスはWi-Fi経由のHTTPプロトコルで行える。例えばFlashAirにWi-Fiでつながった他のスマホやPCのブラウザーから http://flashair/command.cgi?op=190&CTRL=0x0a&DATA=0x01 と打てばFlashAirのCMD(DI)ピンに接続されたLEDが点灯する。また http://flashair/command.cgi?op=190&CTRL=0x0a&DATA=0x00 と打てばLEDは消灯する。
FlashAirで無線SPI Masterはこの仕組みを用い、Wi-Fi経由で、他の端末からFlashAirのピンにつながったSPIデバイスを制御する試みだ。SPI(Serial Peripheral Interface)とは全2重シリアル通信バス規格である。このバス規格をFlashAirのGPIOに割り当てた。転送速度は約1.8bps、1byte送るのに4秒以上かかる計算だ。
写真はSPIスレーブとして動作するLCDに、文字を表示した例である。このLCDは文字を表示するためにもドット単位で送る必要があるので、写真の表示には35分を要したそうだ。
そこでメイカーフェアーでは絶対してはいけない質問をあえて投げかけてみた。「これって何の役に立つんですか?」すると作者は「確かに人間が相手だと1.8bpsは遅いかもしれないが、相手が機械のM2Mなら実用になる用途が必ずある」と胸をはって答えてくれた。
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