フラットベッド型テラヘルツスキャナーは、テラヘルツ波の発振/検出にロームが開発した共鳴トンネルダイオードを使用しており、送受信一体型の小型ヘッドを含めて共同開発を行った。被測定物を試料テーブルに乗せるだけで測定物内部の金属物質などをイメージングできる一般的なイメージングスキャナーのような使い勝手を実現している。封筒や包みの内部検査、金属/プラスチックの異物検査などの用途を想定しているという(関連記事:X線じゃなくても透けて見える、パイオニアとロームがテラヘルツ撮像に成功)。
これらの開発モデルは既に技術的に確立されており「この形でニーズがあるのであれば、すぐにでも出荷できる」とパイオニア 研究開発部 第6研究部の田中博之氏は語る。価格は「数千万円する既に販売されているようなテラヘルツスキャナーよりは安く出せる。できれば1千万円を切るような製品に仕上げたい」(田中氏)としている。高額製品であるので、現実的には顧客のニーズを見極めながら、より最適な形で提供していくことになる見込みだ。
パイオニアがテラヘルツスキャナーの開発に取り組み始めたのは実はここ3〜4年のことだという。そもそもなぜテラヘルツスキャナーに取り組み始めたのだろうか。
テラヘルツ波は、光と電波の両方の特性を兼ね備えているということを前述したが、パイオニアにはレーザーディスク時代から培ってきた高度な光ディスク技術がある。光ディスクはレーザーディスク、DVD、Blu-ray Discと変遷を遂げてきたが、このほとんどの時代でパイオニアは技術的な先進性を持ち続けた。この「光」に関する技術力を生かしたのだ。パイオニアの光ディスク事業そのものはシャープとの合弁会社に移管したが、その光ディスク技術の研究開発を進めてきた技術者たちはパイオニア本体に残った人々も多い。田中氏は「光の反射を測定し必要な情報を取り出す光ディスクに関する技術の多くがテラヘルツスキャナーの開発で生かされている」と語っている。
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