QNX Software Systems(QNX)は、自動車向け機能安全規格であるISO 26262で安全要求レベルが最も高いASIL Dの認証取得が可能なリアルタイムOS「QNX OS for Automotive Safety 1.0」の販売を開始した。
QNX Software Systems(QNX)は2014年11月7日、東京都内で会見を開き、自動車向け機能安全規格であるISO 26262で安全要求レベルが最も高いASIL(Automotive Safety Integrity Level) Dの認証取得が可能なリアルタイムOS「QNX OS for Automotive Safety 1.0」の販売開始を発表した。液晶ディスプレイを搭載するメータークラスタやヘッドアップディスプレイ(HUD)、先進運転支援システム(ADAS)といった、ISO 26262への準拠が求められる車載システムの安全な動作を実現する用途に向ける。
会見にはQNXの製品マネージャを務めるYi Zheng氏が登壇し、QNX OS for Automotive Safety 1.0が求められる背景について説明した。Zheng氏は、「Googleの取り組みをきっかけに、自動運転技術開発の動きが活発になっている。この自動運転技術を実用化する上で、『安全性に対する懸念』『セキュリティに対する懸念』『法的な問題』という3つの新しい課題を解決しなければならない。ISO 26262はこれら3つの課題と深くかかわる規格であり、準拠することが求められる」と語る。
また同氏は、車載システム開発のトレンドについても言及した。「これまでの車載システムのBOMコストは、90%がハードウェアで10%がソフトウェアだった。しかし今後は、ハードウェアが40%、ソフトウェアが40%、コンテンツが20%になるという意見が出るなど、ソフトウェア資産の重要性は高まっている」(同氏)という。もちろん、ISO 26262への準拠が必要な車載システムでは、これらのソフトウェア資産は正しく機能することが求められる。Zheng氏は、「QNX OS for Automotive Safety 1.0はその一助になるはずだ」と主張する。
さらにZheng氏は、「開発した車載システムについて、ISO 26262に関する認証を一から取得しようとすると通常2年はかかる。認証取得のコストは開発コストと同じくらいという話も聞く。そこで、安全要求レベルが最も高いASIL Dの認証取得が可能なQNX OS for Automotive Safety 1.0を使えば、認証取得にかかる時間やコストを圧縮できる」と利点を強調する。
QNX OS for Automotive Safety 1.0は、組み込み機器向けソフトウェアプラットフォームの「QNX SDP 6.5.1」と互換性を有している。QNXは、同プラットフォームの最新バージョン「QNX SDP 6.6」を2014年3月に発表しているが、QNX SDP 6.5.1はこれの1つ前のバージョンとなる。
今回、QNX OS for Automotive Safety 1.0が「ISO 26262のASIL Dの認証取得が可能であること」を認証した第三者機関はTUV Rheinlandである。その認証にはツールチェーンの評価も含まれている。これは、車載システムのISO 26262への準拠では、開発に用いたツールの信頼性レベル(TCL)も勘案されるからだ。
Zheng氏は、QNX OS for Automotive Safety 1.0の販売開始に合わせて、ISO 26262準拠の認証取得を支援するサービスを始めることも明らかにした。「QNXのOSは、一般産業機器向けの機能安全規格であるIEC 61508で最も高い安全要求レベルであるSIL 3の認証取得が可能であることが認められており、既にさまざまな機器に使われている。これまでにわれわれが得た、機能安全規格の認証取得にまつわる知見を生かしながら、ISO 26262準拠の認証取得を支援していきたい」と述べている。
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