「Cyclone V SoC」で2012年よりSoC FPAGの供給を開始したアルテラ。わずか2年足らずではあるが、日本国内においても多くの企業に利用されている。14nmプロセス「Stratix 10」のテープアウトを控えるが、サポートや周辺環境の整備にも注力する考えだ。
2014年10月にFPGA「Generation 10」製品群の新製品「MAX 10 FPGA」のサンプル出荷を開始したアルテラ。同社は64ビットプロセッサ「ARM Cortex-A53」をCPUコアに採用したSoC FPGA「Stratix 10 SoC」のテープアウトも控えており、よりハイパフォーマンスなSoC FPGAについても積極的な姿勢を見せている。
来日した米AlteraのChris Balough氏(SoC Products Senior Director, Product Marketing)が、同社SoC事業の近況について語った。
同社がSoC FPGAの本格出荷を開始したのが2012年。それからわずか2年足らずであるが、日本市場において大手自動車メーカーや通信事業者、FA(Factory Automation)関連企業など100社以上への導入実績があり、3000以上の評価キットを出荷し、ARMからライセンスを受けた開発ツール「DS-5」についても、1000以上を出荷している。その結果についてBalough氏は「おおむね満足している」と述べる。
SoCのロードマップについては既報の通り、28nmプロセスの「Cyclone V SoC」「Arria V SoC」(1.05Ghz デュアルコア Cortex-A9)が出荷中であり、その次には20nmプロセスの「Arria 10 SoC」(1.5GHz デュアルコア Cortex-A9)、さらにはインテルのトライゲートプロセスを利用した14nmプロセスの「Stratix 10 SoC」(Cortex-A53/最大4コア)が続く予定だ。
Stratix 10 SoCについては発表当初、「2014年10月以降のテープアウト」とされていたが、現在では「2015年初頭テープアウト」と時期の表現が改められている。これについてBalough氏は「インテルの都合ではない」と、14nmトライゲートプロセスの量産能力に起因するものではないとしている。
SoC FPGAについてBalough氏が採用事例やロードマップ以上に強調するのは、サポートならび周辺環境整備への注力だ。同社は米テキサス州オースチンに組み込みエンジニアのための研究開発拠点「Austin Technology Center」を2011年に開設、100人規模の人材育成を行っている他、2012年12月にはARMとSoC開発環境についての協業を発表している。
ARMとの協業についてはARM製開発環境「DS-5」のライセンス提供が軸になるが、協業自体が将来の製品までも対象としているため、「今後登場する製品(Cortex-A53コアのStratix 10 SoC)においても、協業の成果を享受できる」とBalough氏は述べている。
このほかにもLinuxの普及をサポートする非営利団体「Linux Foundation」への加入(2014年9月)や、The MathWorksとの協業(同社モデルベース開発環境「MATLAB/Simulink」のリリース2013bからSoC FPGAに対応)なども進めており、特にLinux Foundationへの加入についてBalough氏は「これからは業界全体への還元も行っていきたい」と、SoCを取り巻くコミュニティーへの協力も進めていくとした。
業界全体が注目する「IoT(Internet of Things)」については、「考え方としてはモバイルコンピューティングに関するものと似ている。SoC FPGAは製品投入までの速度向上、ひいてはトータルのコスト低減効果がメリットで、逆を言えばとにかく低単価だけを求める玩具や白物家電では採用されない」と同氏は見ている。
「ただし、低コストと開発スピードのバランスが必要となるモバイル機器、通信機器では効果を発揮するはず。IoTが本格化すれば(ネットワークの)ゲートウェイデバイスへの需要が増大するはずで、私たちのSoC FPGAの採用例も増えるだろう」(Balough氏)と、ネットワーク参加デバイス数が増える時代だからこそ、SoC FPGAの需要は増大するとの意見を述べた。
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