MSC、新解析プラットフォームを正式発表、シミュレーションベース設計ツールとして今後も順次拡張予定CAEニュース

エムエスシーソフトウェア(MSC)は、新たな解析プラットフォーム「MSC Apex」を正式発表した。同プラットフォームは、従来のCADモデルを中心とした製品設計ではなく、シミュレーションをベースとした設計へとシフトさせるアプリケーションだ。

» 2014年10月02日 13時00分 公開
[加藤まどみMONOist]
MSC

 エムエスシーソフトウェア(以下、MSC)は2014年9月30日、新たな解析プラットフォーム「MSC Apex」を正式発表した。

 同プラットフォームは、従来のCADモデルを中心とした製品設計ではなく、シミュレーションをベースとした設計へとシフトさせるアプリケーションとなる。CAEのためのダイレクトモデリングや、モデリングと同時に行うことができるメッシング、「世界初となるコンピュテーショナルパーツをベースとしたCAE」(エムエスシーソフトウェア 代表取締役社長の加藤毅彦氏)などの技術を採用することにより、CAD、プリプロセッサ、ソルバー、ポストプロセッサ、さらにCADでの修正というサイクルをなくして効率的な製品設計を実現する。また、概念設計の実現や解析専任者以外の解析などを可能にするという。

CAE専用ダイレクトモデリング・メッシングツール

 現時点で提供されているのは、CAE向けのダイレクトモデリングツール「MSC Apex Modeler」である。同ツールの特徴は、操作の容易性、CAE専用のモデリングに特化していること、同じツール上でメッシングができ、モデルの編集にもメッシュが追随することである。

 操作性については、頂点をクリックしてさまざまな編集を行う「頂点エッジドラッグ」など、直感的で柔軟な機能を用意する。それとともに機能数を絞ることで、普段解析を行わない人でも数本のチュートリアルを見ればその日にも作業が可能になるという。なお“Apex”は『頂点』などの意味で、この機能にも由来している。

 MSC Apex ModelerではCADからの読み込みにも対応する。従来は解析のためのモデル修正に多くの時間がかかっていた。読み込んだデータの不具合修正や、細かい穴、凹凸などの修正も、専用のダイレクトモデリング機能によって容易になる。

 メッシングについては、モデリング画面上において迅速に行うことができる。また形状を編集すると、その場でメッシュも変更される。モデリングとメッシングのインタフェースが一体化しているため、従来のようにメッシングツールとCADの行き来がなくなるということだ。

板厚の自動割り当て機能と説明動画 図1 板厚の自動割り当て機能と説明動画の様子(出典:エムエスシーソフトウェア) ※画像クリックで拡大表示
ダイレクトモデリングによる穴径の修正 図2 ダイレクトモデリングによる穴径の修正(出典:エムエスシーソフトウェア) ※画像クリックで拡大表示

コンピュテーショナルパーツの解析ツールも提供へ

 MSC Apexは、2014年8月に「Black Marlin」のバージョン名で現状の機能が提供された。2014年末には「Cheetah」のバージョン名で、新しく構造解析ツール「MSC Apex Structure」が提供される予定である。MSC Apex Structureでは、コンピュテーショナルパーツをベースとしたシミュレーションが可能になる。これは、解析モデルとしてアセンブリする前に、個々のパーツを独立してモデリング、修正、メッシング、解析ができる機能で、従来のように個々の部品を設計変更するごとにアセンブリやメッシング、解析を行う必要がなくなる。これによりエンジニアは設計変更した部分だけを解析すればよくなり、サプライヤごとの部品は独立で開発するなど、大幅な効率化が可能になる。

 MSC Apexでは、以下のような設計工程を最終的なデザインゴールとしている。まずダイレクトモデリングによる概念設計を行い、解析、最適化を行って、素性の良いモデルを作成する。続いてCADで詳細設計を行い、その解析は確認程度に抑える。これによって設計のリードタイムを大幅に短縮するということだ。さらに要素数の増加やオープンなプラグイン技術の導入なども進めていくという。

従来のCAD、プリプロセッサ、ソルバ、ポスト、CADでの修正というサイクルを再構築する 図3 従来のCAD、プリプロセッサ、ソルバ、ポスト、CADでの修正というサイクルを再構築する(出典:エムエスシーソフトウェア) ※画像クリックで拡大表示

 Nastranバルクデータやファイル(bdf)による読み込みと書き出しをサポートしており、PatranやMSC Nastranなどの既存の製品によるプロセスと円滑に統合することができる。今後もMSCが持つ多くのソルバ技術をMSC Apexとリンクさせ、Nastranの機能がこの中に組み込まれていくという。「従来の使い方をするユーザーには引き続きNastranやAdams、Marcとして使っていただくが、Apex環境で新しい使い方をすることも可能になる」(加藤氏)ということだ。とはいえNastranは膨大なソフトなので、全ての機能を持ってくるには時間がかかる。そのため、よく使われているものから搭載していくということだ。

 現在提供されているMSC Apexのインタフェースやチュートリアルは全て日本語化されている。MSC Apex Modelerの価格は年間リースで93万8千円、買い取りで187万5000円およびその保守費用が45万円(税別)。検証のための貸し出しにも対応するとしている。

 2014年10月2日に名古屋、3日に大阪、7日に東京で開催されるMSC Nastranのユーザー会「MSC Nastran Technology & Solution Day 2014」でMSC Apexの詳細が紹介される。同年10月8、15日には同ツールの機能を紹介するWebセミナーも実施する。

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