新型「デミオ」の小排気量クリーンディーゼル「SKYACTIV-D 1.5」の可能性エコカー技術(2/4 ページ)

» 2014年09月09日 13時00分 公開
[朴尚洙,MONOist]

「SKYACTIV-D 1.5」で変えたこと

 基本コンセプトは同じとはいえ、SKYACTIV-D 1.5は、SKYACTIV-D 2.2よりも排気量が小さい。排気量2.2lのSKYACTIV-D 2.2に適用した技術をそのまま落とし込んでも、排気量1.5lのクリーンディーゼルエンジンができ上がるわけではない。新畑氏は、「小排気量化で変動する制御因子を等価にするハードウェア仕様を選択した」と説明する。具体的には、先述したSKYACTIV技術のエンジンの開発に関わる7つの制御因子のうち圧縮比と比熱比、壁面熱伝達に関連するハードウェアがSKYACTIV-D 1.5では変更されている。

 まず圧縮比については、SKYACTIV-D 2.2の14.0から、SKYACTIV-D 1.5は14.8と少し高くなった。これは、「低圧縮比化という基本コンセプトをそのままに、SKYACTIV-D 1.5ではピストンギヤの直径が10mmほど小さくなって冷却損失が増えるので、その分燃焼温度をSKYACTIV-D 2.2よりも高める必要が出てくる。このため圧縮比は少し高くなっているが、これはSKYACTIV-D 2.2と同レベルの理想燃焼を維持する適正化のための変更だ」(新畑氏)という。

「SKYACTIV-D 1.5」の開発方針 「SKYACTIV-D 1.5」の開発方針。「SKYACTIV-D 2.2」と比べて、圧縮比と比熱比、壁面熱伝達に関連するハードウェアを変更している(クリックで拡大) 出典:マツダ

 SKYACTIV-D 1.5の開発で変更されたハードウェアは、燃焼室の形状と燃料噴射装置のノズル、過給器であるターボ、EGR(排気再循環)システム、インタークーラーなど多岐にわたる。

 SKYACTIV-D 2.2では、ピストン上部の形状を空気と燃料が混ざりやすいエッグシェイプにした「エッグシェイプ燃焼室」を採用した。SKYACTIV-D 1.5でも同じエッグシェイプ燃焼室を用いていたが、高温の燃焼ガスの流れがピストンとシリンダヘッドの間に入り込むという問題が発生した。高温の燃焼ガスが気筒壁面側に入りこむと冷却損失が増えてしまう。この事態を避けるためシミュレーションを基に設計したのが「段付きエッグシェイプ燃焼室」だ。ピストン上部の縁に段差を付けることで、高温の燃焼ガスの気筒壁面側への流れ込みを抑えられるので冷却損失を増やさずに済む。エッグシェイプ形状はそのままなので、空気と燃料が混ざりやすさは従来と同じだ。

「SKYACTIV-D 1.5」における燃焼室の形状と燃料噴射装置ノズルの変更概要 「SKYACTIV-D 1.5」における燃焼室の形状と燃料噴射装置ノズルの変更概要(クリックで拡大) 出典:マツダ

 小排気量化によるエンジンサイズの小型化に合わせて導入されたのが、燃料噴射装置の短墳孔ノズルだ。この短墳孔ノズルは、表面に浅い大きな穴があり、その中心にSKYACTIV-D 2.2と同径の小さい穴が作り込まれている。燃料を噴射する小さい穴は、大きな穴の深さの分だけ噴射距離が短くなっている。大きな穴によって燃料を広く噴霧する効果も得られるので、燃焼中心を気筒壁面からより内側に持ってくることが可能になり、冷却損失を低減できる。

「SKYACTIV-D 2.2」と「SKYACTIV-D 1.5」の「エッグシェイプ燃焼室」の形状(左)と燃料噴射装置のノズルの比較(クリックで拡大) 出典:マツダ

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