マツダの小型車「デミオ」の新モデルはクリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV-D 1.5」を搭載している。排気量1.5l(リットル)という小排気量でありながら、排気量2.2lの「SKYACTIV-D 2.2」と同じ特性を実現するため、同社はさまざまな工夫を盛り込んだ。
マツダが開発中の小型車「デミオ」の新モデルが注目を集めている。「CX-5」や「アテンザ」、「アクセラ」などと同じデザインテーマ「魂動(こどう)−Soul of Motion」をその小さなボディにあてはめた外観以上に期待されているのが、小排気量のクリーンディーゼルエンジン「SKYACTIV-D 1.5」だろう。
同社は、2012年2月発売のCX-5で、次世代技術「SKYACTIV」に基づく初のクリーンディーゼルエンジンとして排気量が2.2l(リットル)の「SKYACTIV-D 2.2」を採用した。高い走行性能と燃費性能を兼ね備えることもあって、以降SKYACTIV-D 2.2は、アテンザやアクセラにも採用された。国内市場におけるSKYACTIV-D 2.2搭載車の累計出荷台数は、2014年9月9日時点で約10万台を超えるなど評価は極めて高い。
排気量が1.5lのSKYACTIV-D 1.5は、このSKYACTIV-D 2.2の小排気量版に当たる。新型デミオや今後の発売が計画されている小型SUV「CX-3」などに搭載可能なレベルまでダウンサイジングしたクリーンディーゼルエンジンだ。新型デミオについては、電気自動車、プラグインハイブリッド車、ハイブリッド車を除く登録車で最も良好なJC08モード燃費を実現する見込みだ(関連記事:新型「デミオ」が“最高燃費”へ、1.5lクリーンディーゼルを搭載)。
マツダは2014年8月27〜28日、報道陣向けに新型デミオの試乗会を開催。SKYACTIV-D 1.5に採用した技術についての説明も行った。
SKYACTIV-D 1.5の技術説明を担当したのは、同社パワートレイン開発本部の新畑耕一氏である。新畑氏は、SKYACTIV-D 2.2とSKYACTIV-D 1.5に共通する開発コンセプトと、排気量の小さいSKYACTIV-D 1.5で新たに採用した技術に分けて紹介した。
まずSKYACTIV技術のエンジンは、それがガソリンエンジンであれディーゼルエンジンであれ、内燃機関の各種損失を削減するための7つの対応策と、それらの対応策に関連する制御因子を理想状態に近づけることが開発の基本的な考え方になっている。あるゆる条件で理想の燃焼が行えるようになれば、目標とする究極の内燃機関を実現できるわけだが、現時点ではガソリンエンジン/ディーゼルエンジンとも、究極の内燃機関を第3段階とするとまだ第1段階にすぎない。
第1段階であるSKYACTIV-D 2.2とSKYACTIV-D 1.5で重視されているのが低圧縮比化である。圧縮比の高いディーゼルエンジンでは、空気と燃料が十分に混ざる前に自然発火してしまい局部的な異常燃焼が起こり、NOX(窒素酸化物)とススなどの微粒子を大量に生成しまう。このNOXと微粒子の生成を抑えるには、エンジン気筒内の温度と圧力が下がるまで燃料を噴射しないという対策が必要になる。しかしこの場合、ピストンが一定量が下がった状態から燃料を噴射して燃焼を起こす、そこから燃焼エネルギーによってピストンを押し下げる膨張行程の長さも制限されてしまう。このため圧縮比に見合った出力や燃費が得られないのだ。
低圧縮比を図ったSKYACTIV-D 2.2とSKYACTIV-D 1.5は、ピストンが最も上まで行った状態(ピストン上死点)の付近で燃料を噴射し、燃焼を開始できる。このため高圧縮比のディーゼルエンジンよりも膨張行程を長く取れるので、出力や燃費を向上できるというわけだ。新畑氏は、「圧縮比の高い従来のディーゼルエンジンと比べて燃料消費量を20%低減できる」と語る。
低圧縮化によってエンジンの機械抵抗を減らす効果も得られる。最大燃焼圧と温度が低くなるので、軽量かつ低抵抗のエンジン部品をデザインできるようになるからだ。例えば、直径61mm/重量570gだった従来のディーゼルエンジンの回転部品について、SKYACTIV-D 2.2では直径52mm/重量460gまで小型かつ軽量にできるという。
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