日本住宅業界の“アナログ体質”を打破――LIXIL子会社がIT活用サービスを提供製造ITニュース(1/2 ページ)

LIXILグループで住宅建築関連のITプラットフォームを提供するK-engineは、同社の建築資材データベースを利用した住宅建築向けのプラットフォームサービス「K-engine サービス」の提供を始める。2次元の図面データから数分で原価の積算や顧客への見積書、作業工程表の作成ができるという。

» 2014年09月09日 09時00分 公開
[陰山遼将ITmedia]

 LIXILグループで住宅建築関連のITプラットフォームを提供するK-engineは2014年9月8日、東京都内で会見を開き、同社の建築資材データベースを利用した住宅建築向けのプラットフォームサービス「K-engine サービス」の提供開始を発表した。同サービスでは、K-engineの建築データベースを利用して、住宅の2次元の図面データおよび3次元データから、原価の積算や顧客への見積書、作業工程表を数分で作成することが可能になる。

図面データから住宅の見積書を自動作成

K-engine 代表取締役社長 喜久川政樹氏

 会見に登壇した、K-engine 代表取締役社長の喜久川政樹氏は今回発表したサービスについて「日本の木造住宅建築市場は、その63%を中小・中堅の住宅建築会社の方々が担っている。しかし、人材不足や低い利益率に悩まされているという現状がある。また、1棟の住宅を建てるのに250枚のファックスを送るといった住宅建築業界のアナログな体質や、住宅購入者にスピーディーに見積もりを提示できないという課題がある。これらの問題をテクノロジーとアイデアで解決するのがこのK-engine サービス」と説明した。

K-engineが発表したサービスのデモンストレーション。2次元の図面(写真=上段中央)を基に、原価積算や見積書を数分で作成できる(クリックで拡大)出典:K-engine

 同サービスの基本プランとなる「K-engine ベーシックサービス(以下、ベーシックサービス)」では、住宅の2次元の図面および3次元のデータをアップロードすると、その建材や工事項目を約3500の3次元データとして分解する。さらに、同社の約300万の建築データベースを利用して、住宅1棟分の原価積算や住宅購入者への見積書、作業工程表が自動で作成される。また、オプションサービスの「K-engine Designer」を利用すれば、3次元データで顧客にプランニングを提示し、そこから直接見積書を作成することも可能になる。

モバイルプラットフォームも提供

「K-engine Navigator」の概要(クリックで拡大)出典:K-engine

 K-engineは、ベーシックサービスと連動する営業ソリューションツールも提供する。「K-engine Navigator」は、タブレット端末の「iPad」を利用して顧客からヒアリングした家族情報や土地情報、ライフスタイルを基に、その場で最適な間取りや設計コンセプトを提案できるシステム。ベーシックサービスと連携できるため、データベース化された約1200通りの間取りの中から、顧客のニーズと適合するものがあった場合、そのCADデータをダウンロードして即座に見積書を作成することが可能だ。

「K-engine Reform Planner」の概要(クリックで拡大)出典:K-engine

 また喜久川氏は今後、リフォーム用のモバイルプラットフォームサービス「K-engine Reform Planner」も提供すると発表した。これはiPadの画面上で、リフォームしたい部分を3次元データで確認することができるツール。他のサービスと同様に、リフォーム部分の見積もりを顧客にその場で提示することができる。ツール上で家具や床などの仕様を変更でき、それに応じて見積金額も自動で再計算されるシステムとなっている。同ツールは、2014年10月にβ版がリリースされ、2015年1月に正式版を提供する予定だという。

 「モバイル端末の良さというのはリアルタイムにデータを連動できるという点にある。これまで住宅業界ではモバイル端末の活用が進んでいなかったが、K-engineの提供するこれらのサービスでそういった現状を打破していきたい」(喜久川氏)。

 価格については、ベーシックサービスが月額5000円(税別)から、モバイル端末向けのサービスについてはiPad本体と通信料込みで月額8500円(税別)から提供される。喜久川氏は、同サービス群の今後の導入目標について「これらのシステムを自社で構築すると数千万円規模の費用が掛かるため、中小企業が利用することは難しかった。今回のサービスでは、そういった部分をサポートしていきたいと考えている。年間5〜100棟を建てるビルダーを対象に、早期に1万社への導入を目指し、数十億〜数百億円の売り上げを目標としている」と説明した。

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