スズキはハイトワゴンタイプの軽自動車「ワゴンR」に新開発の低燃費化技術「S-エネチャージ」を搭載する車種を追加した。マイクロハイブリッドシステムに相当するS-エネチャージにより、2WDモデルのJC08モード燃費は32.4km/l(リットル)を達成。さらに「ワゴンRスティングレー」には、新たな運転支援システムを追加した。
スズキは2014年8月25日、ハイトワゴンタイプの軽自動車「ワゴンR」に、新開発の低燃費化技術「S-エネチャージ」を搭載する車種を追加すると発表した。JC08モード燃費は、2WDモデルで従来比8%向上の32.4km/l(リットル)、4WDモデルで同6.3%向上の30.2km/lを達成。日産自動車の「DAYZ」と三菱自動車の「eK」に燃費性能で並ばれていたが(関連記事:三菱自「eK」の燃費が「ワゴンR」に並ぶ、「アシストバッテリー」採用で)、今回のS-エネチャージ搭載車種の投入により、再びハイトワゴンタイプの軽自動車で単独トップとなった。S-エネチャージ搭載車種を含めたワゴンR全体での月間販売目標台数は、従来と同じく1万6000台に据え置いた。
今回、S-エネチャージを搭載するのは、ベースモデルのワゴンRで新たに追加した「FZグレード」と、スポーツモデルとなる「ワゴンRスティングレー」の「Xグレード」である。税込み価格は、ワゴンRのFZグレードが、2WDモデルで137万2680円、4WDモデルで149万3640円、ワゴンRスティングレーのXグレードが、2WDモデルで146万1240円、4WDモデルで158万2200円。
従来の低燃費化技術「エネチャージ」を搭載するワゴンRの「FXグレード」の2WDモデルの場合、JC08モード燃費は30.0km/lで、税込み価格は114万4800円である。FZグレードの2WDモデルは、このFXグレードの2WDモデルよりも22万7880円高い。2.4km/lの燃費性能向上に、約23万円の価値があるかどうかは判断の分かれるところだ。
今回発表したS-エネチャージは、2014年4月に発表したハイブリッドシステムである(関連記事:スズキのガソリンエンジン開発目標は平均熱効率で40%、2020年初頭に達成へ)。スターターモーター機能と走行アシストのためのモーター機能を併せ持つ「ISG(モーター機能付き発電機)」と、S-エネチャージ専用のリチウムイオン電池パック、アイドルストップ車専用の鉛バッテリーなどから構成されている。
ISGは、時速15〜85kmの速度範囲内で加速する際に、減速エネルギーを回生してリチウムイオン電池パックに蓄えた電力でモーターを駆動して走行をアシストする。モーターの最高出力は1.6kW(1000rpm)、最大トルクは40Nm(100rpm)である。これによってエンジン負荷を低減し、燃料消費の抑制につなげた。S-エネチャージ専用のリチウムイオン電池パックは、モーターによる走行アシストを可能にするため、回路などを見直して大電流出力を行えるようにした。
軽自動車用エンジン「R06A型」についても、圧縮比を11.0から11.2に高めるとともに、燃焼改善や摩擦抵抗低減、パワートレインの制御最適化などの改良を施した。最高出力は38kW(6000rpm)、最大トルクは63Nm(4000rpm)で、改良前と同じだ。
ISGはスターターモーター機能も有しているので、アイドルストップ状態からエンジンを再始動する際の静粛性と快適性の向上にも貢献するという。
事前の報道では、S-エネチャージを搭載するワゴンRは「ワゴンRハイブリッド」といった、ハイブリッド車をイメージする車両名になるとされていた。しかし、実際にはS-エネチャージ搭載車両とするだけで、ハイブリッド車イメージを全面に押し出していない。
ただし、S-エネチャージ搭載車両の主要諸元における主要燃費向上対策の項目には「ハイブリッドシステム」と記載されている。
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