そもそも、中小企業と小規模事業者の定義とは?伊藤昌良の「知覚動考」(1)

最近特によく聞くようになった「小規模事業者」の定義はご存じ? 中小企業との定義の違いは何だろうか。

» 2014年03月31日 10時30分 公開
[伊藤昌良/エムエスパートナーズ,MONOist]

 私は、神奈川県横浜市の加工部品専門技術商社であるエムエスパートナーズ(MSP)の代表取締役を務める伊藤昌良と申します。連載「心技隊流 未来を創るヒント」の執筆メンバーの1人だったので、もしかして「心技隊の伊藤です」と言った方がお分かりになる方もいらっしゃるかもしれません。

 さてこれから始まる新連載のテーマは「知覚動考(ともかくうごこう)」です。私なりの「知覚動考」を表現すると、以下のようになります。

  • 人は、自分の見たいものしか視野に入れない。
  • 人は、自分の聞きたいことしか耳に入らない。
  • 人は、自分の言いたいことしか口に出さない。

 だから自分で意識し、相手を尊重しながら、多くのことを見たり聞いたり話したりする時間が大切だと思います。そして、見て聞いて「知」ったことを、しっかりと「覚」えて、行「動」に反映させ、しっかりと自分で「考」え発信することが大切だとも思います。それらの言葉をつなげると「知覚動考」となります。

 自分だけの思いや都合だけで動いてくれるほど、この世の中は甘くありません。利他を考えながら、世の中の動きに自分を合わせつつ、最終目的を忘れず「行動」を、「考動」に、そして「考働」へ、その先の「幸働」に向かって!

 この連載では、自分に言い聞かせるための以下の言葉をベースに、私が「考働」する中で気になったことを自分で調べて書き残していくことを考えています。

  • 「考働」できる人間だけが、社会との接点を持ちながら仕事を作り上げて行くんだ!
  • 「行動」すらしないのは論外だ。誰かが助けてくれるだろうなんてのは甘い!
  • 「行動」できて当たり前、変化を起こしたければその場所で待ってちゃ駄目!
  • 「考動」ができてやっと一人前で、自分の判断で動ける人にならなきゃ駄目!
  • 今よりも、もっともっと考働できる思考回路を作れ!
  • 人のために動くことを「働く」と書き、人のためを考えながら動けて「考働」になるんだ! そして「幸働」の源は、「知覚動考」だ!

 今後ともよろしくお願いします。

小規模事業者って?

 第1回は、そもそも「『小規模事業者』とは何だろう」というところから入っていきます。安倍政権に変わってから、急にクローズアップされた感のある「小規模事業者」ですが、一体どんな定義になるのか、私も気になったので調べてみました。

 まず「小規模事業者」と「中小企業」との比較を中小企業庁のWebページから引用してみます。

中小企業者の定義

業種:従業員規模・資本金規模

製造業・その他の業種:300人以下又は3億円以下

卸売業:100人以下又は1億円以下

小売業:50人以下又は5,000万円以下

サービス業:100人以下又は5,000万円以下

小規模企業者の定義

業種:従業員規模

製造業・その他の業種:20人以下

商業(※)・サービス業:5人以下

※商業とは、卸売業、小売業(飲食店含む)を指します。

 以下は、中小企業庁の資料に出ていた数字ベースに考えていきます。統計自体は2006年のものですが、現在も数字自体は変わっていても、割合そのものに大きな変動はないと考えます。ここでは数字そのものより、おおよその割合を見ていきます。

  • 企業総数=421万社:内大企業=1.2万社(0.3%)、中小企業=419.8万社(99.7%)
  • 従業者総数=4013万人:内大企業=1229万人(31%)、中小企業=2784万人(69%)
  • 製造業付加価値額=108兆円:内大企業=50兆円(47%)、中小企業=57兆円(53%)

※上記のパーセンテージは、全企業数に対する数字です。

「日本の中小企業」(中小企業庁)より

 この数字、読者の皆さんも耳にしたことがあるかもしれません。果たして、この中で小規模事業者の位置付けはどんな感じなのでしょうか。以下も上記同様に2006年の数字です。

  • 小規模事業者企業数=366.3万社(87%)、同従業者数=929万人(23%)、同製造業付加価値額=10兆円(10%)
「小規模企業の位置づけ」(中小企業庁)より

 約4分の1の労働者が、小規模事業者で働いているということになります。また、そこで働く人々が日本のコスト競争力を支えてきた歴史があります。

 2013年末に、「中小企業数が400万社を割った」という報道があったのを覚えていますか? ある信用調査会社の担当者によれば、実質的に事業活動している事業者数は300万社程度しかないという話もあります。そんな中、安倍政権は日本再構築戦略の中で「開業率10%を目指す」(「開業率」は新しく開いた事業所数を既存の数で割った値)と掲げています。日本は、バブル崩壊以降一貫して開業率を廃業率が上回ってきました。現在の開業率は5%程度だといわれており、廃業率が6.2%程度だということです。この数字をベースにすれば、実働中の300万社から年1.2%の3.6万社が消えていくことになります。

 また中小企業庁による2006年度の「中小企業白書」のデータによれば、雇用面でいえば、開業者が1325万人を新規雇用し、廃業者が1334万人の失業者を生んでいます。また既存(存続)事業者の雇用創出が935万人で、雇用喪失数が1100万人です(数字は、パートや臨時雇用なども含んだ合計です)。

「中小企業白書」より「第1-2-34図 雇用形態別の雇用変動状況(5年間)」(中小企業庁)より抜粋

 これらの数字を見ていくと、早急に開業率を上げなければならないことは明確です。当社も定義的には商業に分類される小規模事業者であり、わずかながらも従業員を雇用しています。そんな一会社の経営者ではありますが、この国の未来に働く場所をしっかり残すためには、現役の私たちは今後、何をしなければならないのでしょうか。そんなことも含め、私なりの視点で書かせていただければと思いますので、今後もお付き合いいただければ幸いです。(次回に続く)

Profile

伊藤 昌良(いとう まさよし)

1970年生まれ。2004年に株式会社エムエスパートナーズを創業。加工部品専門の技術商社として、アルミ押し出し形材をはじめ切削加工部品やダイカスト製品などを取り扱う。「役割を果たす技術商社」を理念に掲げ、組み立てや簡易加工を社内に取り込みながら、協力会社と共に一歩前へ踏み出す営業活動を行っている。異業種グループ「心技隊」創設メンバー。「自分に出来る事を、自分の出来るやり方で、自分が出来る限りやる」を基本とし、製造業界に必要とされる活動を本業の傍ら日々取り組んでいる。


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