ブームで終わらせたくない! ――アイデアを具体化し製品化するには?サムライたちの集い「第3回 サムライモノフェスティバル」(2)(1/2 ページ)

ここ最近のメイカーズムーブメントは「アイデアを具現化する」ブームともいえる。単なるブームで終わらせず、魅力的な製品を次々と世の中に送り出すためにはどうしたらよいか? 「第3回 サムライモノフェスティバル」よりお届けする。

» 2014年03月12日 08時00分 公開
[杉本恭子,MONOist]

 2014年2月15日、モノづくりとITを中心としたスタートアップの祭典「第3回 サムライモノフェスティバル」が、東京都江東区のテレコムセンターで開催された。前回は、大企業の取り組みと、中小企業(町工場)の取り組みを取り上げた2つのセッションを紹介した。今回は、「アイデアを、いかにして人を引き付ける製品に変えるか」という観点で、2つのセッションを紹介する。

モノづくり時代の製品プロデュース〜アイデアを具体化する力〜

 アイデアを持っていても、カタチにするには別のハードルがある。このセッションでは、それぞれのスタイルでモノづくりを支援している2人の登壇者によって、アイデアの具体化に必要なこと、またそのために両氏はどう支援していくのかが語られた。

岩淵技術商事 岡島康憲氏

 岩淵技術商事の岡島康憲氏は、かつて大手電機メーカーでWebサービスに携わりながら、趣味としてハードウェアを作って紹介していた“両刀使い”だという。趣味が高じて2011年に岩淵技術商事の創業に携わった。主に太陽光発電などのエネルギー系のチャージコントローラーを開発し、研究用途として販売する傍ら、企業向けのハードウェアのプロトタイプ製作や、ハード、ソフト、双方からの相談に応じている。

 その一方、クリエイターやエンジニアが具現化した『未来のふつう』を表彰するコンテスト「Gugen」を企画運営し、交流イベントなどによってチームメンバーを見つける場、アイデアの可能性を世に問う場、ビジネス化に向けたサポートする場を提供している。

ケイズデザインラボ 代表取締役 原雄司氏

 ケイズデザインラボ 代表取締役の原雄司氏は、デジタルとアナログの融合に可能性を感じ、ここ最近の“3Dプリンタブーム”以前から3Dプリンタを販売してきた。まだ3Dプリンタが注目されなかった時代は、企業やアーティストの開発をアイデアワークから量産までプロデュースしてきた。

 近年は、3Dプリンタを活用したユニークなワークショップも開催している。例えば、全身をスキャンして作る「全身チョコ」や「男グミ」、自分の3Dフィギュアを作ってミニ四駆に乗せて走らせるという「ジブンドロイド☆ミニ四駆!」などを通じて、体験する場を提供している(関連リンク:「CUBE × znug design「ジブンドロイド☆ミニ四駆!」レポート」)。

ケイズデザインラボが運営する「3DDS in CUBE」に備える人物用3次元スキャナー「bodySCAN 3D」で人の全身データをスキャンする様子

 まず企業内開発について原氏は「上司の顔色をうかがっていてはダメで、目的の共有と合意形成が必要。そのためには、いかに早くプロトタイプを作って見せるかが重要」という。ソフトウェアでは普通になっているアジャイル開発は、昨今ハードウェアでも可能になってきた。実際原氏は3Dプリンタで作ったモックアップを、役員の通る廊下に並べるといった「作戦」も実践したことがある。「アイデアと同時にプロセスを見えるようにすることが必要」(原氏)。

 つまり、「いかにうまくプレゼンテーションするか」ということだ。しかし実際、企業内でムービーを使ったプレゼンテーションをするケースはまだ少ない。原氏は「早期にプロトタイプを作って、カッコよくプレゼンすることで、もっと面白いものが世に出てくるし、日本の企業も変わるのではないか」という。

 また個人での開発について原氏は「資金を調達する方法はあっても、実装や販売までトータルで支援してくれる組織が、日本ではまだ不足している」と指摘。岡島氏も同意見だ。「例えばアメリカの『HAXLR8R』はハードウェアベンチャーを支援するインキュベーション組織で、投資家という側面も持っている。アイデアを商品化したい人たちに、作る工程や品質管理、特許などと幅広い相談に応じている。日本でもABBALabがトータルな支援を始めているが、もっとサポートしてくれる組織が出てきてほしい」(岡島氏)。

 同時に「製造業の流れとMAKERSの流れがあまりクロスしていない。コミュニティーが“固まっている”のはすごく残念。もっと融合してもいいのではないか」と原氏。岡島氏も「45歳以上のエンジニアは全体を設計できる。その年代より後になると、作業が細分化されすぎていて、1人が分かるのは一部分だけ。会社の中に埋まっている45歳以上の人のノウハウを引き出して、新しいモノづくりをしたい人たちとつなぎ合わせることができれば、コミュニティーも広がるのでは」との考えだ。

 原氏は「3Dはモノづくりの中核になる」との考えから、「3D道場」を立ち上げる、3Dクロッキーデッサン、スキャニングから、金型まで、幅広いコースを提供する予定だ。目的もなく3Dプリンタを導入したいという人が増える中、「本当にモノづくりを好きになってほしい」(原氏)という思いがある。併せて「営業、マーケティング、生産技術や外部の製造業など、異業種も含めたスモールチームで、速く開発するのが重要。コツコツと実現して世の中に実例を広めていきたい」と、ハードウェアのアジャイル開発の重要性を語る。(関連記事:「3DプリンタやCADが学べる「3D道場」とは? ――面白チョコレート作り実演も」)。

 岡島氏も、今企業内にいるマネジメント級の人、手を動かしている人、工場にいる人、Webサーバ専門の人、また個人でモノづくりをしている人やアイデアを持っている人など、「ヒューマンリソースをミックスアップしていきたい。そういった交流によって今までにない具体性のあるアイデア、将来性のあるプロトタイプができてくるだろう」とさまざまなスキルを持つ人の交流からアイデアの具体化を支援したいと考えている。

 両氏は、「アイデアを具体化し、製品化する」という現在のムーブメントについて、「ブームで終わらせたくない」とセッションを締めくくった。

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