「KOPEN」はモノづくりの新しい仕組みのアイコンとなるのか(後編)車両デザイン(1/3 ページ)

樹脂外板をスマートフォンケースのように“着せ替え”られる、ダイハツ工業の軽スポーツカーのコンセプトモデル「KOPEN」。このKOPENが生み出そうとしている「モノづくりの新しい仕組み」について、プロダクトデザイナーの林田浩一氏による分析と提言をお届けする。

» 2014年02月06日 11時30分 公開
[林田浩一/林田浩一事務所,MONOist]
「KOPEN」はモノづくりの新しい仕組みのアイコンとなるのか(後編)

 ダイハツ工業(以下、ダイハツ)の軽スポーツカーのコンセプトモデル「KOPEN」は、樹脂外板による“着せ替え”と、その樹脂外板のデータを一般公開する方針によって注目を集めている。前編では、このKOPENというクルマの狙いについて、デザインを統括する和田広文氏(ダイハツ デザイン部 主査)へのインタビューを中心に紹介した。

 後編では、2014年1月開催の「東京オートサロン2014」で行った和田氏へのインタビューや、和田氏とKOPEN開発責任者の藤下修氏(同社技術本部 製品企画部 チーフエンジニア 次長)のトークショーの内容から、樹脂外板のデータを一般公開していくというKOPENの仕組みが持つ広がりや可能性について、少々想像(妄想?)を巡らせてみたい。

ダイハツの和田広文氏(左)と筆者の林田浩一氏 ダイハツの和田広文氏(左)と筆者の林田浩一氏。「東京オートサロン2014」の会場内でインタビューを行った(クリックで拡大)

KOPEN×アフターマーケット

 真っ先に思い浮かぶのは自動車のアフターマーケット業界との関係性であろう。走行のための機能や性能に影響を与えずに樹脂外板を全て交換できるからには、アフターパーツメーカーなりカスタムショップなりの中には、“オリジナルカー”を仕立てる素材としてKOPENを見ているところは既にありそうだ。

 確かに、樹脂外板がカバーのような構造であるが故に、従来のモノコックボディと比べるとカスタマイズの範囲は広がるだろう。とはいえ、ビジネスとして考えると、車両の前後に組み付けるスポイラーなどよりは、事業投資の規模もリスクも大きい。アフターパーツメーカーを巻き込んでKOPENを盛り上げるというのであれば、樹脂外板の関連データを公開するといった情報提供だけにとどまらない、何らかのサポートプログラムが必要かもしれない。

「KOPEN」は、ボディ骨格(左)をベースに、樹脂外板を着せ替えることでさまざまなデザイン(中央、右)が可能になる(クリックで拡大) 出典:ダイハツ工業

 今回ダイハツは、樹脂外板のデータを公開するに当たって、個別に申し込んでもらうという方法を考えているようである。例えば、この公式ルートで申し込んで来たアフターパーツメーカーの製品に対し、公式グッズ認定のような仕組みを取り入れるというのはどうだろうか。認定パーツであれば、ディーラーオプションのカタログにも掲載されるとか、認定パーツの開発の際にダイハツ側がアドバイスをするサービスメニューがあるとか、ビジネス面での協業姿勢が見えるプログラムがあれば、アフターパーツメーカー側のモチベーションも上がる、かも。

 うまくサイクルが回れば、アフターパーツメーカーや販社にとってビジネスチャンスが広がる。もちろん、純正パーツを開発するダイハツ側にとっては、認定パーツとの競合を心配する向きもあるかもしれない。しかし、こういった外部のアイデアやクリエーションが社内の商品企画を刺激する要素になるということは、ダイハツであれアフターパーツメーカーであれ参加者のいずれにもメリットがあるはずだ。

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