デベロッパー部門は、基本的に前回までの競技を踏襲する。コースは、前半の「ベーシックステージ」と後半の「ボーナスステージ」で構成されており、ベーシックステージの走行タイムからボーナスタイム(最大50秒)を引いた時間が競技の結果(リザルトタイム)となる。ボーナスステージには“難所”として、インコース側にルックアップゲート、アウトコース側にシーソーがあり、通過できればボーナスタイムを得ることができる。
アーキテクト部門の新設によって、デベロッパー部門はより初級者向けとしての位置付けが明確になった。前回に比べて、ベーシックステージが長くなっており、基本であるライントレース走行を重視。その半面、ボーナスステージでは、難所が2カ所から1カ所に削減され、完走が容易になった。結果として、前回はボーナスステージの完走率が10%しかなかったのに、今回は50%以上にまで跳ね上がった。
また、その他にもルールの大きな変更が2つあった。1つは、走行体の尻尾を接地させたまま走る「尻尾走行」が禁止になったこと。尻尾走行は3点接地で安定するため、走行スピードを速くすることができる。かなり大きな効果があるため、最近ではほとんどのチームが尻尾走行を採用していたが、これが禁止となったことで、本来の倒立振子ロボットとしてのスタイルで走行する必要がある。
もう1つは、コースのショートカットが可能になったこと。前回は、中間ゲートは全て通る必要があったのだが、今回、通過が必須なのは第1・第4だけで、第2・第3は通過しなくても構わない。通過しない場合は、その分のボーナスタイム(各5秒)がもらえなくなってしまうが、ショートカットによって5秒以上タイムを短縮できるようなら、やった方が得だ。どこでどうショートカットしたら早くなるか、自由度が増したことで、競技の戦略性が高まったといえる。
ただショートカット走行にはリスクも伴う。道しるべとなるラインをあえて外すわけで、最悪の場合、コースを見失ってしまうこともあり得る。そのリスクを最小にするために、多くのチームはなるべくラインが近いところでショートカットを行っていたのだが、そんな中、かなり思い切ったショートカットを披露していたのが優勝した「じぇっとあーる」(ジェイテクト)だ。
同チームは第1中間ゲートを通過後すぐにショートカットを行っていたのだが、その後しばらくラインを無視するように最短距離を走行。ラインに復帰後、さらに第4中間ゲートの後でも再度ショートカットするなど、走行距離の短縮が徹底していた。走行自体も安定して速く、2回の走行タイムの合計は46.3秒。これは第2位とは10秒近い差があり、まさに圧巻の走りだった。ボーナスステージも確実に完走し、リザルトタイム(−43.7秒)は文句なしのトップ。
じぇっとあーるはモデル審査でも第1位となっており、総合での“完全優勝”を達成。驚くのは、このチーム、今回が初出場とのこと。先行する他のチームに追い付くため、前回のチャンピオンシップ大会の全出場チームのモデルを調査・分析、定石を把握した上で、改良を加えていったという。そういった地道な努力が、初出場ながら競技・モデル審査ともに第1位という快挙につながった。
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