「M2M」「IoT」「クラウド」――“つながる技術”が切り開く組み込みの未来「ET2013」展示会場リポート(2/3 ページ)

» 2013年12月04日 09時30分 公開
[佐々木千之,MONOist]

気温、栄養状態から出荷まで植物工場の管理を見せる日立ソリューションズ

 日立ソリューションズは、同社の「M2Mデータ収集基盤」と日立製作所のクラウドサービス(SaaS、PaaS)を組み合わせ、各種センサー情報をゲートウェイシステム経由でクラウドに収集して管理し、見える化するというデモを展示していた。

 類似のデータ収集システムは各社出しているが、このM2Mデータ収集基盤の特徴は、ゲートウェイ装置にデータを収集して送信を行う通信部分にポーティングレイヤーを設けている点だ。これにより、導入の際、ポーティングレイヤー部分を相手先の環境に合わせ込むだけで簡単に組み込むことができるという。また、集めてきたデータをクラウドに上げる際、よく3G回線が使われるが、軽量プロトコルであるTFTP(Trivial File Transfer Protocol)を用いることで、オーバーヘッドを減らし、かつ通信料金を抑えられる。このM2Mデータ収集基盤は、植物工場を運営するグランパが山梨県にあるドーム型植物工場の運営管理に導入しており、ブースでは工場から送られてくるデータを見せていた。M2Mデータ収集基盤は2014年2月に正式販売の予定だ。

グランパ グランパはレタスの水耕栽培のドーム工場を十数カ所で運用しており、温度や栄養状態などの他、その日のレタスの出荷数も管理できる

安価なクラウドシステムでIT以外の分野へ広げるコア

 「何でもつなげてStart! M2M」をテーマに出展していたコア。同社は、M2Mとクラウドを組み合わせたソリューションの普及を目指し、小さなシステムで安価に始められるM2Mスタートプラン「お試しクラウドキット」を訴求。農業分野やヘルスケア分野での事例を紹介していた。

土壌センサーシステム 農業向けに用意した土壌センサーシステム。土壌の温度、水分量、CO2量のデータを収集する

 農業分野では、ある園芸農家のビニールハウスに、ハウス内の温度監視やスプリンクラーの散水スケジュール設定、換気扇の作動などをスマートフォンやタブレット端末から行えるサービスをテスト導入済みだという。現場に行かずに離れたところから監視や制御ができるというわけだ。このテスト中の農家からは「人件費が削減でき、これまで難しかった旅行などができるようになった」と評価されているとのこと。

 大掛かりなシステムでは、個人経営の農家の方などは気軽に試すことができない。しかし、同社のシステムならば数カ月だけ試してもらうということも容易にできる。小規模で、やりたいことがある程度限られているのであれば、こうした安価なモデルを導入してみるのもよいだろう。

イチゴのハウス コア自身も宮崎県に農業法人を立ち上げイチゴのハウス栽培事業「コアファーム」を行っている。システムの実証実験もしており、ブースではそこでのリアルデータをタブレット端末で見せていた
ヘルスケア ヘルスケア分野向けには血圧計や体重計のデータを、Bluetoothでスマートフォンやタブレット端末に送り、そこからクラウドなどの管理サーバに上げて、健康データを一括管理するというデモを見せた。実際に介護施設に導入して、入居者の健康管理に使う実証を行っている

Javaを使った開発はArmadilloで、アットマークテクノ

 CPUボードとOS/ミドルウェアを組み合わせた、開発・量産プラットフォーム「Armadillo」シリーズを展開するアットマークテクノブースでも、M2Mとクラウドを組み合わせた展示を行っていた(関連記事:「確実なモノづくりを支援」――Armadilloがさらに使いやすく! 組み込みやすく!)。

 まず目に入ったのは、インテリジェントカメラ向けの「Armadillo-810」と、セールスフォースのクラウドプラットフォームを組み合わせた、積雪量監視システムのデモだ。発泡スチロールの“雪”が積もっていく様子をカメラで監視するのだが、画像をそのままクラウドに送るのではなく、Armadillo-810内で処理して、積雪量データの形で送ることができる。これを収集したクラウドシステム側では、注意や警告を発信することが可能で、除雪されて雪の量が減るとそれもほぼリアルタイムにモニタリングできる。送信データが軽く、データ送信の負担やサーバ側の処理が少なくて済むため、監視対象が増えても容易に対応できるのが特徴だ。

Armadillo-810 「Armadillo-810」とクラウドシステムによる降雪量監視システム。降雪量が警告ラインを超え、監視サーバ(右側のノートPC)に赤いアラートが出て、左下の警告灯が点灯したところ

 もう1つ同社がアピールしていたのが、先ごろ契約したという、オラクルとのJavaランタイムライセンス契約だ。Javaを使ったシステムを開発、製品化しようとした場合に、通常は個別にオラクルと契約を結ぶ必要があるが、少量生産の製品などでは費用も契約のための手間や時間も負担が大きい。今回同社が結んだ契約では、「Armadillo-840」や「Armadillo-400」シリーズにJavaランタイム環境(JRE)をバンドルし、それら製品を商品化して、量産する場合でも開発する企業はオラクルと個別契約しなくて済むというものだ。オラクルとこのような契約をした企業は米クアルコムに続いて2社目とのことだ。

Java 8 「Armadillo-840」上で動作するJava 8(β115)のデモ。実は日本で初の展示だという

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