トヨタ自動車とFord Motor(フォード)は、2011年8月に基本合意したハイブリッドシステムの共同開発を中止すると発表した。その理由は、北米のハイブリッド車市場でフォードがトヨタ自動車のライバルとして認知されたことや、電気自動車の失速によるハイブリッド車の価値の相対的な高まりがあるとみられる。
トヨタ自動車とFord Motor(フォード)は2013年7月23日(米国時間)、2011年8月に基本合意したハイブリッドシステムの共同開発を中止すると発表した(関連記事:Fordとトヨタがハイブリッドシステム開発で協業、次世代テレマティクス分野の標準化も視野に)。2012年末に正式契約を結ぶために、両社の要求のすり合わせを行うフィージビリティスタディ(実現可能性を検討するための調査)を進めてきたものの、折り合いが付かず、個別に開発を進めるべきだと判断した。
両社が共同開発の対象としていたのは、FR車やRR車など後輪駆動式(RWD)を採用する、小型トラック(ライトトラック)やSUV(スポーツ多目的車)向けのハイブリッドシステムである。2011年8月の発表では、2010年代中の実用化を目指すとしていた。フォードは、共同開発を中止する一方で、独自に開発したRWD向けハイブリッドシステムを2020年までに市場投入する方針を示している。
ハイブリッドシステムの共同開発と併せて発表した、次世代テレマティクス分野に関する協業は継続する。この協業では、車載情報機器などの共同開発ではなく、テレマティクスで用いられる規格や技術の標準化が対象となっている。
トヨタ自動車とフォードは、なぜハイブリッドシステムの共同開発の中止を決断したのか。それは、2011年8月の基本合意からの2年間で、フォードがハイブリッドシステムの開発を大幅に加速させて、北米のハイブリッド車市場で先行するトヨタ自動車のライバルになったことが理由として挙げられるだろう。
2011年8月時点で、フォードのハイブリッド車のラインアップは、SUV「エスケープ」やセダン「フュージョン」などのハイブリッドモデルに限られていた。これらのハイブリッドシステムは、トヨタ自動車からライセンスされた技術を用い、トランスミッションをアイシン・エィ・ダブリュから調達するなど、トヨタ自動車のハイブリッド車とほぼ変わらないものを搭載していた。
しかし、2012年に投入した、ハイブリッドワゴン「C-MAX Hybrid」や新型フュージョンのハイブリッドモデルは、トヨタ自動車のハイブリッド車よりも安価で、燃費も良好であったこともあり好調な販売を続けている。現在の北米のハイブリッド車市場で、トヨタ自動車に対抗できているのはフォードだけといっても過言ではない。
また、フォードは2012年8月に、ハイブリッドシステムを含めた電動システムの自社開発に注力する方針も打ち出している(関連記事:フォードが電動システム開発に約100億円を投資、EVやHEVの開発期間を25%短縮)。トヨタ自動車の技術から脱却しようという姿勢は鮮明になっていた。
加えて、今後しばらくはハイブリッド車がエコカー市場の中核を担うのが鮮明になってきたことも、大きな要因になっている。2011年8月からの2年間で、電気自動車に対する市場の期待は大きくトーンダウンしており、その一方でハイブリッド車に対する期待はさらに大きくなった。「プリウス」をベースに開発された「プリウスPHV」のように、ハイブリッドシステムの応用によってプラグインハイブリッド車を開発できることも、ハイブリッドシステムを独自開発する意義を強めている。
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