新興国では現在、とにかく価格を抑えた自動車が好まれていますが、今後は交通事故死を減らすため、シートベルトやエアバッグ、ABSなどが標準装備されていくことは容易に想像できます。
そうなると、新興国で売れる自動車を開発するのに必要な技術も変わってきます。これまではエンジンなどを中心とした基本部分の組み込み制御システムを構築できればよかったのが、安全装備を含めたより高度な制御システムの開発が求められるようになってきます。世界的に見れば、今後ますます自動車関連の組み込みエンジニアは必要とされるようになるでしょう。
そして先進国でも、死亡事故をさらに減らすべく、事故を起こさない技術の開発が進んでいます。富士重工業の衝突防止システム「EyeSight(アイサイト)」のCMが話題となりましたが、衝突自体を防ぐアクティブセーフティー技術の標準搭載が当たり前のことになってくるはずです。
実際に自動車業界からは、ブレーキ制御やステアリング制御、カメラシステム、画像認識など、「アクティブセーフティー」をキーワードにした求人は増加してきています。
アクティブセーフティーは、レーダーで距離を、カメラで画像を取り込み、画像処理して周囲の状況を認識、適切な動きをするように制御指令を出す技術です。この技術領域は必ずしも自動車が先行しているわけではなく、産業ロボットや家電など、自動車よりも技術的に先行している領域もあります。
そうした先行領域で活躍している組み込みエンジニアにとってはチャンスです。自動車業界の経験がなくても、優れた技術・経験を持つ組み込みエンジニアを「採用したい」と考える自動車関連のメーカーは増えてくることでしょう。
自動車による死亡事故ゼロという壮大な目標に向けて技術を極める。自動車業界を希望するエンジニアには「走りを極める・燃費を極める」という志向の持ち主が多かったのですが、「安全性を高めることで社会に貢献する」という志向の持ち主にも自動車業界への就職/転職を検討してほしいものです。死亡事故ゼロの未来を実現すべく、組み込みエンジニアの皆さん、仮に自動車好きでなくてもこの志を持って自動車業界にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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