組込みシステム開発技術展(ESEC)の基調講演で話題になったのは、新興国で増えるばかりの交通事故死の問題。自動車関連の求人動向を考えると、より安全な自動車社会を実現するため、組み込みエンジニアを求める動きが強まってきそうです。
本記事は人材紹介会社「メイテックネクスト」河辺真典氏からの寄稿です。
私たち日本人が思っている以上に、自動車業界のメーカーは「交通事故死を減らすのだ」という強い使命感を抱いているようです。
5月8日〜10日に掛けて開催された組込みシステム開発技術展(ESEC)の基調講演では、コンティネンタルの日本・韓国地区プレジデント クリストフ・ハゲドーン氏と、デンソーの電子プラットフォーム開発部 柴田浩担当部長が登壇。交通事故死を減らすための取り組みが、話題の1つとして取り上げられました。
日本では1970年に、交通事故による死亡者数が過去最悪となる1万6765人を記録。同年以降、シートベルトの普及、信号などの交通インフラの整備が進むことで、2012年には4411人にまで減少しました。
一方、世界保健機関(WHO)の発表によると、世界での交通事故による死亡者数は2010年、120万人に上りました。モータリゼーションが進む新興国においては、社会インフラの整備が自動車の爆発的な普及に追い付かず、死亡事故は増加の一途。日本の状況に当てはめて考えると、1960年代の状況にあるそうです。
私も自動車に乗りますので、自動車という存在に対して否定的なスタンスではありません。ただ、ルールに則っているとはいえ、消費者に提供される“製品”を使用中に事故が起こってしまい、人が亡くなる可能性があることに疑問を感じています。
国内では死亡事故が減ってきたことで、交通事故死に対する問題意識が薄らいできている気がします。けれど世界的に見ると、「交通事故による死亡者が発生しない世界を実現する」ことの重要性は増すばかり。そのためにさまざまな対策を講じている自動車関連メーカーの現状を、日本人は再認識する必要があると思います。
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