これだけは知っておきたい! 「財務会計の勘所」目指せT字型人材! 中小企業エンジニアのスキルアップ(5)(3/3 ページ)

» 2013年04月30日 18時20分 公開
[平阪靖規/MPA所属 中小企業診断士,MONOist]
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中小会計要領のポイント

 中小会計要領は、「1. 収益、費用の基本的な会計処理」から「14. 注記」までの14項目からなり、それぞれ会計処理のルールが明記されています。「中小会計要領を利用する」というのは、つまり、「決められたルールに沿って会計処理をする」ということになります。それぞれ具体的にどのようなルールがあるのか、ほんの一部だけ抜粋して紹介します。

減価償却費

 減価償却費を計上するに当たり、適切な利用期間を耐用年数にしてよいということになりました。具体的には、あるメーカーがNC工作機械(1500万円)を購入した場合、本来は法定耐用年数が5年経っていれば、定額法に基づき毎年300万円を減価償却しなければなりません。しかし、このNC工作機械が「メンテナンスすれば8年使える」ということが分かっているなら、「8年で減価償却してもよい」ということになりました。

 また、機械の操業度などに基づいた減価償却費の計算も認められるようになりました。具体的には、リーマンショックなどの影響で受注額が激減し平年の20%まで落ち込んだ場合に、本来であれば300万円を減価償却しなければならないところを「300万円の20%」、つまり「60万円」を製造原価に算入し、残りの240万円を特別損失という形で会計処理することができるようになりました。

減価償却の考え方

棚卸資産

 中小企業で多く利用されている「最終仕入原価法」を、他の評価方法とともに利用できることが明記されました。

正しい知識を身について財務経営力を強化しよう

 「財務経営力」とは、中小企業政策審議会が2011年12月に公表した「中間とりまとめ」の中で初めて利用されたキーワードです。

 「財務状況を認識し、それに基づいた的確な経営方針を構築する力」という意味を持っています。もともと中小企業が決算書を作る大きな理由は、「税務署に申告をしなければならないから」でした。ここに、「会計で会社を強くする」という発想はなかったと思います。しかし、現在の厳しい経済状況下で黒字決算を続けるためには、しっかりと「数字を読める力」を持っておく必要があります。この数字を読める力こそ、「財務経営力」に他なりません。会社経営において、数字とは必ず付き合っていかなければなりません。また、昨今では経営者だけではなく現場のマネジャーやエンジニアも、経営者と同じ視点を持って日々業務に当たることが求められるようになってきました。

 今回紹介した内容は、財務会計における基礎の基礎。このような基礎をしっかりおさえて、会計に興味を持っていただいて、次のステップとして実践的に数字を見る目を養っていくようにしていただければ幸いです。ぜひ正しい知識を身に付けて、自社の財務経営力を強化しましょう!!

 次回は、ファイナンスをテーマに取り上げます。具体的には、資金繰りや資金調達などの基本的なお話をする予定です。ご期待ください。

Profile

平阪 靖規(ひらさか やすのり)

中小企業診断士。大手SI企業にてITコンサルタント・プロジェクトマネージャを経験。その後、独立し中小企業向け経営コンサルタントして活躍。現在は、コンサルティング業務の他、公的機関での創業支援、中小企業診断士の講師業、中小企業のIT化支援に携わっている。全国2万人の中小企業診断士のためのプラットフォームを目指す「中小企業診断士の輪」を運営中。趣味は、登山と新聞の切り抜き。



MPAについて

「MPA」は総勢70人以上の中小企業診断士の集団です。MPAとは、Mission(使命感を持って)・Passion(情熱的に)・Action(行動する)の頭文字を取ったもので、理念をそのまま名称にしています。「中小零細企業を元気にする!」という強い使命感を持ったメンバーが、中小零細企業とその社長、社員のために情熱を持って接し、しっかりコミュニケーションを取りながら実際に行動しています。

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