せっかく開発した製品も、顧客が手に入れることができなければ“無駄な努力”となってしまいます。製品と顧客が出会う場を設定することが「流通」です。マーケティング用語では、この製品と顧客が出合うまでの経路を「チャネル」と呼んでいます。
企業が製品を販売する方法は、顧客に対して直接販売する方法と仲介業者に委託する方法の2つに大別できます。前者は、訪問販売、インターネット販売、カタログ通販などで、後者はメーカーと小売店の関係などです。近年はインターネットの普及により生産者が消費者へ直接販売する形態が増えつつありますが、本稿では「仲介業者に委託する」流通に絞って見ていきましょう。
まず、なぜ企業はわざわざ販売業務の一部を外部の仲介業者に委託するのでしょうか? 委託するということは自分たちでコントロールできないリスクが高まりますので、一見不利益のようにも思えます。しかし、仲介業者に委託するメリットがしっかりと存在するのです。
企業が生産する製品の組み合わせと消費者が欲しがる製品の組み合わせには、通常、食い違いがあります。例えば、お昼ご飯を買いに出掛けるとき、お弁当と飲み物をセットで買うことが多いと思います。しかし、お弁当を生産している企業と飲み物を生産している企業は多くの場合別々です。もし、それぞれの企業がお弁当のみを販売する店と飲み物のみを販売する店を独自に開業していたとすると、消費者は、それぞれの店で買い物をしなければならずとても面倒です。私たちの日常生活では、コンビニエンスストアやスーパーマーケットといった仲介業者(小売店)が多数存在するため、このような不便さを感じることなく欲しいものを1カ所で購入できるのです。
このことは、生産者にとっても流通にかかわる作業量を減らせるというメリットがあります。例えば、図1のように3つの企業が3つの顧客に対して製品を販売する場合は、仲介業者がいないと企業ごとに3回の接触作業が必要で、全体でみると接触作業は9回となります。
一方で仲介業者がいる場合は、各企業の接触作業は1回、全体でも6回となり、顧客と接触するための作業量を減らすことができるのです(図2)。
それでは、次に仲介業者の数をどのように決めれば良いか見ていきましょう。仲介業者の数の決め方には主に3つのやり方があります。
このように流通では、専門品、最寄品、買回品といった自社の製品特徴に応じてチャネル政策を選択することが必要なのです。
顧客の欲求を満たして製品が魅力的な価格で入手できるだけでは、まだ十分とはいえません。それらの存在を標的市場セグメントに知らせる必要があります。その役割を担うのが「プロモーション」です。プロモーションには主に4つの方法があります。
プロモーションでは、これら4つの手法の相乗効果を実現するために各手法の特長が生かされるように組み合わせていくことが求められ、このことを「プロモーション・ミックス」と呼んでいます。
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