はやぶさ2は小惑星までどうやって向かうのか? 〜ミッションシナリオ【前編】〜次なる挑戦、「はやぶさ2」プロジェクトを追う(6)(2/3 ページ)

» 2013年02月15日 11時00分 公開
[大塚実,MONOist]
※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

1年後に再び地球に戻ってくるのはなぜか?

 「はやぶさ2」が目指す天体は小惑星「1999JU3」である。1999JU3は、近日点距離が0.96AU(天文単位)、遠日点距離が1.42AUという楕円軌道を周回しており、公転周期は約1.3年(約474日)。このように地球に接近する軌道を持つ天体を地球近傍小惑星(NEA:Near Earth Asteroid)と呼ぶが、そのおかげで比較的少ない燃料で到達することができる。ちなみに、初代が向かった小惑星「イトカワ」もNEAである。


小惑星「1999JU3」と「イトカワ」の軌道図 小惑星「1999JU3」と「イトカワ」の軌道図。どちらも近日点は地球軌道の内側まで来ている(提供:JAXA)

 「はやぶさ2」は打ち上げ後、真っすぐ1999JU3には向かわずに、まずは地球と併走しつつ、太陽を1周する。そして、1年後の2015年12月に再び地球に接近し、地球の引力を利用して軌道を変える「地球スイングバイ」を実施。1999JU3に向かう軌道に入れるだけでなく、地球の公転を利用して、探査機の加速も同時に行う。これは初代でも使われた方法だ。

地球スイングバイをする「はやぶさ2」の想像図 地球スイングバイをする「はやぶさ2」の想像図。針の穴を通すような精度の高い誘導制御が求められる(©池下章裕)

 ロケットが十分に強力ならば、ダイレクトに目標天体に向かうこともできるだろう。しかし、H-IIAの場合、そこまで高い能力はないのでスイングバイを使う必要がある。初代では、地球スイングバイにより、太陽周回の軌道速度が秒速30kmから同34kmまで加速された。スイングバイの原理について、ここで詳しくは述べないが、JAXAのWebサイトが参考になるだろう。

撮影した地球 初代「はやぶさ」がスイングバイ時に撮影した地球の画像。地球までの距離は約30万kmで、中央には北大西洋が見える。2004年5月17日に撮影された(提供:JAXA)

 「はやぶさ2」の軌道図を以下に示す。この図は、太陽を原点に地球をX軸にそれぞれ固定して、その座標系の上に1999JU3と「はやぶさ2」の軌道を表示したものだ。図上で地球は固定されているが、もちろん実際には太陽の周りを公転している。実際の1999JU3の軌道は楕円であるが、この座標系においてはこんな“花”のような形となる。

小惑星「1999JU3」と「はやぶさ2」の軌道 太陽と地球を固定した座標系に表示した小惑星「1999JU3」と「はやぶさ2」の軌道。太陽と地球に対する相対的な位置が分かる(提供:津田雄一助教)

 「はやぶさ2」の往路の軌道は赤色で示されており、「EDVEGA Loop」と注釈のある小さなループが、地球スイングバイまでの1年間の軌道である。実際には太陽の周りを1周しているのだが、地球との相対位置が近いために、この図ではほとんど動いていないように見える。

 その後、スイングバイによって軌道を大きく変え、地球を離脱。1999JU3の軌道はピンク色で示されているが、徐々に近づき、2018年6〜7月に1999JU3に到着する予定だ。地球を出発してから、およそ3年半後のことになる。

 ちなみに、NASA/JPLのWebサイトでは、1999JU3の諸情報を見ることができる。「Orbit Diagram」をクリックすれば軌道も表示されるので、参考になるだろう。簡易的な計算であるため、何年も先の予測位置では誤差が大きくなる可能性もあるが、軌道のイメージがつかみやすいので、興味があればチェックしてほしい。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.