公共機関での移動中は、スマートフォンで利用できる専用アプリで、自分が購入したい物や行きたい店舗のリストデータを目的地で絞り込む。データには、今までFacebookやTwitterに投稿した物やスポットが集約されている。最終的には、3つのリスト(「モノリスト」「コトリスト」「バショリスト」)の全てが合致するスポットを割り出してくれる。
現地に着いたら、COMPASSの本機が、アプリで絞り込んだ情報を基にガイドする。
「その場のノリやフィーリングで行動するのが、最近の若者の行動特性。寄り道しながら、わいわい皆で楽しくショッピングをするのも醍醐味(だいごみ)。バス停から降りて、すぐに目的のスポットに着いてしまうだけでは、あまり楽しくない。商店街の目的地周辺のガイド機能をモビリティに持たせれば、若者の“自由気ままな行動”に合ったものになると考えた。また若者の周りには情報にあふれていて、“あれもしたい” “これもしたい”となるが、実際、それをしないもの。このガイド機能を使えば、願望と行動のプロセスを密接につなげられる。それで、社会が活気づき、経済効果の上昇も望めるのではないかと考えた」(奥田氏)。
「大賞受賞作品のようなミニマムなモビリティの他、もっと車っぽい作品もあった。ただ、車っぽくなるにつれて、乗車する人に対する車両の大きさ、その大きさに対するデザインの感覚が希薄になってしまう傾向があった。3次元CADやNatural Sketchなどでデザインの作業がデジタル化していく一方で、もっと“実感を持って” “身体で感じて”デザインを提案してほしいと審査をしながら強く思った。私が学生だった時代は、きれいな字をプレゼンボードに描こうとするだけで苦労した。その頃からしたら、デザインの表現方法のレベルが非常に向上していることを実感した」(デザインジャーナリスト 有元正存氏)。
「3DSwYmというデジタルの世界でチームがコミュニケーションを取り、審査もリモートの環境から、リアルタイムかつオンデマンドで行えた。これも、1つの新しい取り組みだった。大賞のチームは、3DSwYmを用いてコミュニケーションし、手描きスケッチや、Natural Sketchなどのデジタルツールの所作を体験し、作品作りしたことも評価したい。テクノロジーを載せてパーソナルモビリティを作ろうとすると、“技術ガチガチ”になって、無機質な物になりがちで、“自分が楽しむこと”が先になってしまう。一方、大賞チーム作品は、“やさしさや人格を持たせたようなデザイン”だった。技術アプリケーションにより、やわらかく、しなやかな、温かな人の気持ちのようなものを製品に刷りこむ可能性を感じたデザインだった。社会性も持っている」(SIM-Drive ジェネラルマネージャー 畑山一郎氏)。
日本におけるデザイン現場において、コンセプトの段階では従来、手描きのスケッチを描いてきた。ダッソーがその領域のデジタル化促進を支援する理由は、昨今の製品や開発組織の複雑化、製品市場の移り変わりの早さに対応するために3次元化された設計データとデザインコンセプトとの密な連携が必須だと考えるためだという。
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