米国は化石燃料への依存度を引き下げる取り組みを全方位で進めている。太陽光、風力、バイオマスなどが有力だ。米軍も石油依存度を引き下げる取り組みを進めている。米General Motorsから燃料電池車(FCV)を購入、用途開拓を進める。
米軍は2012年2月23日(現地時間)、燃料電池車(FCV)16台の納入を米General Motors(GM)から受けたと発表した(図1)。水素を燃料とするFCVである。GMによれば、軍用FCVとしては世界初の実績であるという。
太平洋陸軍総軍(USARPAC)は、FCVをハワイに配備し、実用車として運用する*1)。GMでGlobal Fuel Cell Activitiesのエクゼクティブ・ディレクターを務めるチャールズ・フレーゼ(Charles Freese)氏は、発表資料の中で「軍用FCVを運用することで、燃料電池技術を将来どのような用途に役立てることができるのか、データや経験が得られるだろう」と述べている。
*1) ハワイは燃料電池の研究開発が盛んである。13の大学、企業、研究開発機関が米陸軍、米空軍、米海軍と共同でハワイ水素イニシアチブ(Hawaii Hydrogen Initiative)を結成している。
FCVを購入したのは、軍用車両に関する研究開発機関TARDEC(Army Tank Automotive Research Development Engineering Center)と海軍のONR(Office of Naval Research and Air Force Research Laboratories)、空軍のAFRL(Air Force Research Laboratories)である。
米軍は今回のFCVの導入について、石油依存を減らす米国全体の努力の中で、軍事用途でも石油以外のエネルギー源の開発、利用を進めていく取り組みの一環だとしている。今回のFCVを具体的にどのような用途で利用するのか、米軍は発表していない。ただし、電力の外部出力端子(コンセント)を備えていることから、汎用電源車としても使う可能性がある(図2)。
燃料電池車は加圧水素タンクに水素を1回充填(じゅうてん)すると、ガソリン車よりも長距離を走行できる。さらに充填時間はガソリン車並だ。電気自動車(EV)と比較したとき、これらの点が有利である。
ただし、水素供給インフラがほとんど整備されていない。電力とは異なり、そもそも広域にわたる配送網が作られていない。そのため、国内では太平洋岸の高速道路を軸とした長距離輸送用のトラックや大型車などから、普及を進める計画が立てられている。
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