全国のモノづくり屋が集まった超本気のコマ対決テクニカルショウヨコハマ 2012 レポート(1)(1/4 ページ)

記事前半は神奈川県の湘南地区のほか、北九州市の産学連携事例を、後半は「全日本製造業コマ大戦」について紹介する。

» 2012年02月08日 13時05分 公開
[小林由美@IT MONOist]

 2012年2月1〜3日、公益財団法人神奈川産業振興センターらが主催する工業技術見本市「テクニカルショウヨコハマ 2012」が開催された。神奈川内だけではなく、県外の企業・団体の出展も目立った。

 本記事前半では、神奈川県湘南地区のユニークな自転車の事例と、北九州市内の産学連携による超高輝度LED投光機の開発事例を紹介する。いずれも、新たな市場ニーズに向けてチャレンジしている事例だ。

 本記事の後半と、レポートの第2回では、モノづくり系異業種集団「心技隊(しんぎたい)」のブースと、今回注目を集めたイベント「全日本製造業コマ大戦」(コマ回し大会)について取り上げる。この大会では、地域や企業の垣根がない、まさに“心と技”の熱い勝負が繰り広げられた。

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湘南生まれのユニークな自転車

 湘南広域都市行政協議会のブースでは、ユニークな電気自動車(EV)や自転車などの展示が目立った。

 同協議会に属する湘南工科大学 コンピュータデザイン学科 教授の小谷章夫氏は、企業やデザイナーと共に、多目的自転車「トランク」を開発。この自転車は、湘南新産業創出コンソーシアムらにより2011年に開催された「第12回 湘南ビジネスコンテスト」で「ビジネス大賞」および「来場者賞」を受賞した製品だ。

湘南工科大学 小谷研究室「トランク」

 この自転車の大きな特徴は、珍しいシャフト駆動式だということ。チェーン駆動式と比べ、土砂や砂利の多い悪路で安全に走れることが利点だ。


 シャフト部を長くしたのは、荷台の領域確保のため。また重心を低く設計(荷台を低く)し、車輪も小さくしたことで、不安定な地面でも安定した運転ができるようにしている。荷物は80kgまで載せられる。まだがれきが多く残る被災地での活躍も期待できるとしている。

 軽さを求めながらも剛性のある構造をかなえるためフレームはアルミ製とした。全長は1900mm、重量は19.5kg。

 トランクは、展示会ではこのご時世に合わせて災害地での利用をアピールしていたが、本来はもっと“湘南的”で、平和なコンセプトで企画されていた製品だった。

 「海へ遊びに行くときに、サーフボードとビールを積んで……、という感じの使い方を考えていました」と語ったのは、トランクをデザインしたCYCLE BOYのデザイナー 谷信雪氏。シャフト駆動なら、浜辺の砂でチェーンが詰まる心配もない。

 そのデザインは都会にも田舎にもなじむようなスタイルで、“漠然と、懐かしい感じ”にしているという。この“漠然と”がポイントで、「レトロ調」とも少し違うと谷氏は説明した。その“懐かしい感じ”と、シャフト駆動技術というミスマッチもポイントだと言う。

 機構設計や生産については、大阪市の自動車メーカー 服部産業が担当する。

 「服部産業の人たちは、“漠然と、懐かしい感じ”を理解できる人たちです。設計をする人が、論理的なことだけではなく、そういった感性も持ち合わせていたことも、いい自転車作りへつながったと考えています。実際、そういう設計者はなかなかいません。モノづくりを楽しむ気持ちも大事だと思います」と谷氏。

 服部産業によるトランクの設計では、まず手描きの構想図で設計を煮詰めていき、設計の後半で2次元CADを使って論理を整理していったと言う。

 「今後は、子どもが乗せられるような形など、荷台の形状バリエーションを増やす予定」と同社の取締役専務 服部将之氏は話した。まだニーズについてはリサーチ中であり、量産台数や販路は現時点では未定だという。この展示の反響を見てもっと具体的に検討していくと言うことだ。

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