記事前半は神奈川県の湘南地区のほか、北九州市の産学連携事例を、後半は「全日本製造業コマ大戦」について紹介する。
2012年2月1〜3日、公益財団法人神奈川産業振興センターらが主催する工業技術見本市「テクニカルショウヨコハマ 2012」が開催された。神奈川内だけではなく、県外の企業・団体の出展も目立った。
本記事前半では、神奈川県湘南地区のユニークな自転車の事例と、北九州市内の産学連携による超高輝度LED投光機の開発事例を紹介する。いずれも、新たな市場ニーズに向けてチャレンジしている事例だ。
本記事の後半と、レポートの第2回では、モノづくり系異業種集団「心技隊(しんぎたい)」のブースと、今回注目を集めたイベント「全日本製造業コマ大戦」(コマ回し大会)について取り上げる。この大会では、地域や企業の垣根がない、まさに“心と技”の熱い勝負が繰り広げられた。
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湘南広域都市行政協議会のブースでは、ユニークな電気自動車(EV)や自転車などの展示が目立った。
同協議会に属する湘南工科大学 コンピュータデザイン学科 教授の小谷章夫氏は、企業やデザイナーと共に、多目的自転車「トランク」を開発。この自転車は、湘南新産業創出コンソーシアムらにより2011年に開催された「第12回 湘南ビジネスコンテスト」で「ビジネス大賞」および「来場者賞」を受賞した製品だ。
この自転車の大きな特徴は、珍しいシャフト駆動式だということ。チェーン駆動式と比べ、土砂や砂利の多い悪路で安全に走れることが利点だ。
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シャフト部を長くしたのは、荷台の領域確保のため。また重心を低く設計(荷台を低く)し、車輪も小さくしたことで、不安定な地面でも安定した運転ができるようにしている。荷物は80kgまで載せられる。まだがれきが多く残る被災地での活躍も期待できるとしている。
軽さを求めながらも剛性のある構造をかなえるためフレームはアルミ製とした。全長は1900mm、重量は19.5kg。
トランクは、展示会ではこのご時世に合わせて災害地での利用をアピールしていたが、本来はもっと“湘南的”で、平和なコンセプトで企画されていた製品だった。
「海へ遊びに行くときに、サーフボードとビールを積んで……、という感じの使い方を考えていました」と語ったのは、トランクをデザインしたCYCLE BOYのデザイナー 谷信雪氏。シャフト駆動なら、浜辺の砂でチェーンが詰まる心配もない。
そのデザインは都会にも田舎にもなじむようなスタイルで、“漠然と、懐かしい感じ”にしているという。この“漠然と”がポイントで、「レトロ調」とも少し違うと谷氏は説明した。その“懐かしい感じ”と、シャフト駆動技術というミスマッチもポイントだと言う。
機構設計や生産については、大阪市の自動車メーカー 服部産業が担当する。
「服部産業の人たちは、“漠然と、懐かしい感じ”を理解できる人たちです。設計をする人が、論理的なことだけではなく、そういった感性も持ち合わせていたことも、いい自転車作りへつながったと考えています。実際、そういう設計者はなかなかいません。モノづくりを楽しむ気持ちも大事だと思います」と谷氏。
服部産業によるトランクの設計では、まず手描きの構想図で設計を煮詰めていき、設計の後半で2次元CADを使って論理を整理していったと言う。
「今後は、子どもが乗せられるような形など、荷台の形状バリエーションを増やす予定」と同社の取締役専務 服部将之氏は話した。まだニーズについてはリサーチ中であり、量産台数や販路は現時点では未定だという。この展示の反響を見てもっと具体的に検討していくと言うことだ。
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